3月11日に起きた大地震と津波により、東北の太平洋側は甚大な被害を受けました。
犠牲になられた方々に謹んで哀悼の意を表します。
その東北に私たちは強い思い入れがあります。
私たちはこれまで東北地方を2周もしているのです。
自分でいうのもなんだけど、2周っていったら相当な距離ですよ。
青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島の6県。
それを2周ですから。しかも軽自動車で。
もちろん鉱物採集のため。
そのなかでもメインにしたのは岩手県と宮城県。とくに岩手県はたくさんまわった。
大船渡の海岸沿いにある崎浜地区というところには国の天然記念物に
指定されているトルマリンの露頭がある。
ひとことでトルマリンといっても、真っ黒のトルマリン(ショール:鉄電気石)じゃあありません。
宝石に加工されるエルバイト(リチア電気石)の露頭。
日本に3か所しかない産地のうちのひとつなのだ。
この時はけっきょく採集することはできなかったのだけれど、過去に産出したものを
見せてもらったところ、パステルの淡い赤が結晶の途中からグリーンに変わるバイカラー。
結晶の外側がグリーン、内側が赤いウオーターメロン。
「これほどまでにキレイなトルマリンが日本にあるのか」と思うくらいのものだった。
そして、大船渡から南へ車で1時間もかからないところに陸前高田がある。
リアス式海岸である東北の太平洋側は海と山が非常に接近していて、
高台を通るバイパスは海沿いを通っているのか山沿いを通っているのかよくわからない。
風に揺れる木々の隙間からは青く光る海が見えていた。
そしてバイパスがゆっくり下り始めると眼下に陸前高田市街が見えた。
陸前高田は三角形の一辺を海に接し、残りの二辺が山と山の間に流れる川に沿って
内陸に伸びていく形をしている。
私たちは海岸沿いにある道の駅で一夜を過ごし、翌朝、ほど近い玉山金山に向かった。
玉山金山ではインクルージョンのない透明な水晶を見つけることができる。
が、残念ながらここでも採集をすることができなかった。
なぜならこの日は朝から土砂降りの雨。
鉱山の目の前まで来て私たちは車から降りることができなかった。
雨が降ったら採集はしない。少しでも危険だと感じたら撤退することも重要だ。
私たちはリベンジを誓って山を下りたのだ。
遠くへ来たときは採集だけではつまらない。
採集ができないならば観光をすればいいのだ。
私たちはそのまま内陸に向かい、平泉にある中尊寺そして少し離れて遠野に行ってみた。
五月雨の 降り残してや 光堂 (さみだれの ふりのこしてや ひかりどう)
これは松尾芭蕉が奥の細道で中尊寺金色堂を詠んだ俳句。
金色堂は平安時代に建立された中尊寺境内にある建築物のうちのひとつで国宝。
中尊寺に着いたときは雨は上がり青空も見え始めていたから、
雨に光る金色堂はどんなに綺麗なことだろうと楽しみにしていた。
しかし、金色堂は金色堂を守るために近年建てられたお堂の中にスッポリと収まっており、
直接日の光が当たらないようになっていた。
松尾芭蕉が見たのと同じ金色堂を見ることはできないけれど、文化財保護の観点から
これは重要なことなのだと納得しておこう。
そして遠野。
民話の里、妖怪の里、カッパの里。
駅前にはカッパの像。交番はカッパの顔。
カッパ淵はちょっと薄暗くて、もしかしたらホントにいるかもね、と思わせてくれる。
500円でカッパ捕獲許可証を買ってくればよかったな。
遠野から再び海に向かう。
かやぶき屋根を横目に見ながら山を2つほど越えると徐々に民家が増え、
そしていきなり大きな街になった。
宮古市街。
ここから海岸線に沿って北へ。久慈市に向かう。
遥か眼下に見える海。その海岸線にへばりつくようにいくつもの漁村があった。
久慈市街を通り抜けその海岸で探すのは琥珀なのだけれど、場所がわかっても
探すコツがわからなければ琥珀は見つけられない。
ここで岩手県に住む琥珀探しのエキスパートと待ち合わせた。
彼に案内されて海岸に降りる。
琥珀はこの海岸にそびえる断崖に顔を出していた。
帰りは久慈から東北自動車道で一気に宮城県白石市まで。
そこには紫水晶の産地がある。
ここは日本でも有数の美しい紫水晶の産地。
ここでたっぷり採集を楽しみ私たちは東北をあとにした。
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今、一人ひとりにできることは小さいけれど、それが集まればとてつもなく
大きな力になると信じています。
たくさんお世話になっている東北に少しでも恩返しをするために、
自分にできることは何か、それをよく考え行動に移していきたいと思っています。