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地球のかけら

【第71回】アメシスト

2011年1月 1日

平成二十三年、あけましておめでとうございます。
本年もみなさまが石たちとともに幸せな時間を過ごされることをお祈り申し上げます。

さて、2011年ですよ、2011年。
早くも21世紀の10分の1を消化してしまいました。
どんどん未来に向かっている感じがしてワクワクします。

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※画像はウィキペディアより
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画像はウィキペディアより

それで、お正月といえばやはり日本の雅。
雅といえば紫水晶(むらさきすいしょう:アメシスト)でしょう。
アメシストは2月の誕生石でお正月とは関係ないけれど、でも紫はものすごく雅で、お正月っぽいと自分では思っているのです。


ところで、アメシストってちょっと普通の水晶と違うのかなーって思ったりしたことありませんか?

私は水晶の中でもかなり特殊なものなんだと思ってました。
え、いきなり特殊っていっても何が特殊なのかわかんないですよね。
紫という色はキレイですから、それだけで他の水晶より人気は飛び抜けており、
それが特殊だということもできるわけですが、私が特殊だと思っていたのは形のことなのです。

ちょっとみなさん思い出してみてください。
アメシストのクラスターって結晶がゴテゴテゴテーっとたくさん付いていても、その結晶はすべて頭(ポイント)の部分だけ。柱面はまったくといっていいほど無いでしょう。

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でも水晶って無色にしろ、シトリンにしろ、煙水晶にしろ、みんなスラッとした
いかにも水晶という形をしているじゃありませんか。
クラスターならそのスラッとした水晶が所狭しと立っている。

ところがアメシストだけはそうじゃない。
柱面のない頭の部分だけが並んでいる。

さらに裏返してみると母岩の色は緑。
中が空洞になった大きな岩の中にアメシストがビッシリ並んでいるカペラも、母岩である表面の色は緑。

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※画像はウィキペディアより

頭だけ、母岩は緑。
どこのショップで買ってもそこがみんな同じ。
道の駅にも売っていたりするけど、それも同じ。
みなさんの持っているアメシストもたぶん同じはず。

私は思ってました。
アメシストは「こういう形にしかならないんだ」と。

そして鉱物採集を始めて、初めて「おや?」っと思ったのです。
アメシストはどの産地で採集してみても無色の水晶と何ら変わらない柱面が
ちゃんとあるスラッとしたアメシスト。
売っているような見慣れたアメシストはひとつもなかったのだ。

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左:宮城県産、 右:石川県産
どちらもしっかり柱面がある。

そこで調べてみて初めて知ったのです。
あの売られているアメシストはほぼすべてブラジル産だということを。
カペラもクラスターも全部ブラジル産。たぶん99パーセントがブラジル産。

特殊だと思っていたあの形。
頭だけで柱面のない、母岩が緑のアメシストはブラジル産の特徴。
とくに母岩の緑はアメシストを採掘するときに入るヒビをしっかりくっつけるための
接着剤入りセメントの色だったのだ。

この時点でようやく私は理解した。アメシストが特殊なのではなく、アメシストの中でも
あのブラジル産のアメシストこそが特殊だったのだ。
特殊なものが市場の大半を占めていたために、アメシスト自体が特殊なのだと勘違いしていたのだ。
私以外にも同じ勘違いをしていた人はいるはずだ、たぶん。


でも、アメシストは世界中で産出するはず。
なぜほとんどがブラジル産なのか。

現在、アメシストの主要な産地は、南アメリカのブラジル、ウルグアイそして中央アフリカのザンビア。

この3ヶ国のアメシストはどれも甲乙つけがたいくらい美しく、それぞれ宝石として加工されている。

しかし、宝石に加工される最高品質のアメシストはほぼ真っ黒に見えるくらい色が濃い。
原石の状態で美しく見えるものは指輪やペンダントに加工すると、石の厚さが薄くなり色が無くなってしまう。

その宝石に適さないものが原石観賞用になるのだけれど、ウルグアイ産とザンビア産には
色溜まり(いろだまり)またはカラーバンドと呼ばれる色の偏りムラがある。
例えば極端だけど、ひとつの結晶の中で半分は紫、半分は無色となっていたりする。

宝石ならば無色の部分を避けてカットすればいいのだけれど、観賞用でのそれは致命的だ。
さらにザンビア産はインクルージョン(内包物)も多く、原石の状態ではなかなか鑑賞に耐えられない。

それらに比べるとブラジル産はカラーバンドもインクルージョンも少ない。
宝石では対等でも原石ではブラジル産が圧勝。

また水晶自体、他の宝石に比べ産出がかなり多く、希少価値があまり高くない。
それゆえ、高い価格設定ができないことから市場のほとんどがブラジル産に
なってしまうのではないのだろうか。

でも個人的にはインクルージョン入りの方が好きだし、カラーバンドが
ものすごく強く出ているアメシストクラスターの方により興味があったりしてますけど。


ブラジル産アメシストの特徴は頭だけの結晶と緑の母岩。
それ以外のものがあったなら、それはかなり珍しいアメジスト。
もし、そんなアメシストを見つけたら、どこ産かも含めて要注目ですよ。


それでは今年もまた一年、よろしくお願いいたします。

 

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