トップページ > 地球のかけら

地球のかけら

【第72回】金

2011年1月31日

crystalswiki.jpg
※画像はウィキペディアより

今回は金(きん:ゴールド)について書きますよ。
お正月第2弾というにはもう2月だけれど、2月3日は2011年の節分であり旧正月だから、まあよしということで。
で、なんで金かというと、お正月に金沢に行って来たんです。
金沢は加賀百万石の城下町。兼六園を始め九谷焼、輪島塗、友禅などたくさんの文化がありますが、その中に金箔の文化もあるんですよ。
お土産にその金箔の端切れを買ってきたんですが、さすが箔でも金は金。眺めているとその輝きにウットリするのです。 

hakuwiki.jpg
※画像はウィキペディアより


でも、ひとくちに金といっても金ほど特殊……、いや特別な鉱物はない。
化学的に非常に安定している金は、錆びない変化しないということから古代では永遠もしくは太陽そのもの代名詞だった。

今でもその考えを受け継いでいる人は世界中にいるけれど、現代においての金は円やユーロと違い、相対的に価値の変わらないものとして投資の対象になっている。
投資の対象となる鉱物。それが金のもっとも特別なところだ。


経済的な話はよくわからないので、鉱物としての特徴を考察してみた方がいいよね。

まずは重い。とにかく重い。
どのくらい重いかというと、例えば、掃除をするときにバケツに水を入れるよね。
七分目くらいまで入れて、重いなって考えながら運ぶと思うんだ。
で、もしその水が金だったとしたら。
確実に持ち上がらない。きっと地面にバケツが固定されているんじゃないかと
いうくらい持ち上がらない。だって、それだけで100キロ超えてるはずだから。
「お代官様お納めください」
「ほっほっほ、越後屋お前もワルよのう」
といって、饅頭の下に小判の隠れている箱をスーッと差し出すシーンを
時代劇でよく見るけれど、アレもムリ、あり得ない。
きっと20キロはあると思うから。
スーッて腕を伸ばしたら、たぶん自分が後ろにさがっちゃう。
そのくらい重い。

さらに金は軟らかい。
歯で噛むと歯形が残るくらい軟らかい。
その昔は歯形が残るものが純金。残らないものが偽物とされていた時代もあったほど。

そしてその柔らかさが金の利点でもあり欠点でもあるのだ。
利点としてはものすごく薄く伸ばして金箔にできるということ。
1グラムの金がタタミ一畳にも広がるくらい薄くできる。この金箔を貼れば、いろんなものを金ピカにできる。
家中を金ピカにしても思ったほどお金はかからない。まあ悪趣味かどうかは人それぞれではあるけれど。
 
ところが、ジュエリーやアクセサリーになると、今度はそれが欠点になる。
軟らかすぎて強度が確保できないのだ。
ダイヤモンドの付いている指輪の台がもし純金製だったなら、
おそらく一週間以内にそのダイヤモンドは指輪からはずれどこかへ行ってしまうだろう。

しかし大丈夫。
金は他の金属を少し混ぜることによって格段に強度が増す性質も持っている。
そのぶん純度は下がっていくのだけれど、強度を上げるためにはしかたがない。
だから金のジュエリーやアクセサリーには必ず純度を表す数字が刻印されている。

それが18金(K18)とか24金(K24)などの数字。

これは世界共通の表示なんだけど、「それ何?」って思ってた人もいるんじゃないかな。
これは金の純度を24分率で表したもの。
24金が100パーセントの純金を表している。
アクセサリーなどでもっとも多く見られる18金は純金の24に対し18だから
75パーセントの金を含んでいるという意味になる。

K18の「K」は「KIN」の頭文字の「K」ではなくて、カラット(Karat)のことで、
宝石の重さを表すカラット(Carat)とは区別しなければならない。
でも語源は同じイナゴマメのギリシャ語名 keration からきているらしい。

でも、なぜ24分率なのだろう。初めから百分率(パーセント)で表してくれればめんどくさくないのに。
理由として金はものすごく歴史が古く、昔の風習が残ってしまったっていうことかな。
24分率の由来としては「天秤で量っていたから」というものもあれば「1日が24時間だから」と
いうものもあって、とにかくよくわからないというのが本当のところだと思う。
要するに深い意味はないってこと。

よって最近、インゴットとかコインなどの宝飾品以外の金には百分率や
さらに細かくした千分率(パーミル)が使われるようになっている。

inngwiki.jpg
※画像はウィキペディアより
 

上はインゴットの写真。
999.9パーミル(99.99パーセント)の表示がある。
どちらも9が4つ並んでいることからフォーナインと読む。
このフォーナイン以上が24金、純金と認められる。
 
プラチナやシルバーは初めから千分率が使われているね。
Pt900とかSV925などがそれ。
金の元素記号はAuだから、そのうち18金だったらAu750なんて表記になるかもね。

ところで、同じ金なのにピンクゴールドとかホワイトゴールドのカラーゴールドってあるでしょ。
これは他の金属を混ぜることによって色を変えた金のこと。

・ピンクゴールド
銅を20パーセントほどまぜたもの。
これでかわいいピンク色。
銅をもっと増やすと、赤くなってレッドゴールドになる。

・ホワイトゴールド
ニッケル、またはパラジウムを混ぜたもの。
さらに銀や亜鉛なども加えるとホワイトになる。

他にもグリーンゴールドとかイエローゴールドとかあるけれど、
みんな同じように別の金属を加えて作っている。
オシャレになる上に強度も確保されるナイスなゴールドってことですね。
あえていいますけれども、純金のカラーゴールドはあり得ないです。

そういえば、しばらく前は18金以下の金は見たことなかったんだけど、
このご時世、10金とか9金とかも多く見かけるようになってきちゃいましたねえ。


さて、話は変わって金は全世界で産出します。
もちろん日本でも何百年も昔から金は採掘されている。
一番有名なのは新潟県の佐渡金山かな。
現在日本国内で稼働している金鉱山は鹿児島県の菱刈鉱山(ひしかりこうざん)のみ。

でもね、日本には実はかなり多くの金山があったんだ。
ただ、それが記録に残っていないだけ。
なぜなら、金山は当時の政府や幕府にとってものすごく重要な施設。
ほとんどがその存在を隠されていたから。
たくさんあった金山も、その多くが鉱夫ごと隠され歴史の中に忘れられていった。

現在、隠された金山はその地名に名を残している。
「金山(かなやま)」「金平(かなひら)」など、「金」という文字の入っている地名は、
その昔そこに金山があった可能性が非常に高い。

そんな中でも有名な佐渡金山のような金鉱山はいったいどれだけ大規模な鉱山だったんだろうと思う。

その佐渡金山を見学に行ったことがあります。
鉱夫の蝋人形が怖かったです。だって、私を見て笑うんだもん。 
首がギギ…っと回って

え、まあ、それはおいといて。
金鉱脈は石英脈のなかに含まれる形で今でも残ってました。
この金を含んだ石英が銀黒(ぎんぐろ:エレクトラム)というんだけど、
たぶん銀を含んでいるせいで真っ黒になっているからそう呼ばれるようになったんだと思う。
その銀黒が売られているんだけど、高くて手が出ない。

拳くらいの大きさで何万円もする。

そのくせ黒くて金色もしていないから金鉱石だとわかっていても、ピンとこなかったりする。
 
このように鉱山とか山の中から掘り出されるような金を総称して山金(やまきん)と呼んでいる。
でも銀黒という名前からもわかるように、山を掘っていていきなり高純度の金が
出てくるわけじゃないから、山金を探してもあまり楽しくはない。

y.jpg

まれに写真のような山金も出るときがあるけれど、これも銀を多量に含んでいるため、
いずれは真っ黒になると思う。

 
反対に砂金探しは楽しいぞ。
もちろん根気はいるけれど、川底の砂を専用の皿に入れ軽い砂を徐々に流していく。
椀掛け(わんがけ:パンニング)という方法だけれど、これなら最後の最後に
残った金色のものは確実に金だ。
しかも低純度の山金に対して砂金は24金。そのまま純金が出てくるんですから。

とはいえ、せっかちな人も多いらしく、そういう人はしっかり流さないうちに
キラリと光るものを金だと思い込むらしい。
博物館の先生に聞くところ「金を見つけた!」といって喜び勇んで
持ち込まれるそのほとんどがパイライトか金雲母なんだそうだ。

ちなみに本当に根気がいるんで、根性無しの私たちは未だにまともに見つけられていません。

ところで、山金が低純度で砂金が純金ってことになると、ちょっと疑問が生まれませんか。
私もずっと思っていたんだけれど、砂金って山金が風化して川に流れ出たものだと考えられている。
きっと誰もがそう考えていると思うし、そう考えるのが自然だ。
しかし、もしそうなら同じ純度じゃなきゃおかしくないか?

砂金には「山金の風化」ではない違う原因があると私は考えている。

saki3wiki.jpg→1回でこんなに採れることはありません。
※画像はウィキペディアより


2000年には1グラム当たり1000円を切ることもあった相場が、現在はほぼ4000円で推移している。

これは高すぎ、異常。
これじゃ金貯金もできないし、指輪を買っても、そのほとんどが台の値段ってことになってしまう。
早く景気が上向いて元の相場に戻ることを切に願います。


 

【第71回】アメシスト

2011年1月 1日

平成二十三年、あけましておめでとうございます。
本年もみなさまが石たちとともに幸せな時間を過ごされることをお祈り申し上げます。

さて、2011年ですよ、2011年。
早くも21世紀の10分の1を消化してしまいました。
どんどん未来に向かっている感じがしてワクワクします。

ame1_wiki.jpg
※画像はウィキペディアより
ame2_wiki.jpg
画像はウィキペディアより

それで、お正月といえばやはり日本の雅。
雅といえば紫水晶(むらさきすいしょう:アメシスト)でしょう。
アメシストは2月の誕生石でお正月とは関係ないけれど、でも紫はものすごく雅で、お正月っぽいと自分では思っているのです。


ところで、アメシストってちょっと普通の水晶と違うのかなーって思ったりしたことありませんか?

私は水晶の中でもかなり特殊なものなんだと思ってました。
え、いきなり特殊っていっても何が特殊なのかわかんないですよね。
紫という色はキレイですから、それだけで他の水晶より人気は飛び抜けており、
それが特殊だということもできるわけですが、私が特殊だと思っていたのは形のことなのです。

ちょっとみなさん思い出してみてください。
アメシストのクラスターって結晶がゴテゴテゴテーっとたくさん付いていても、その結晶はすべて頭(ポイント)の部分だけ。柱面はまったくといっていいほど無いでしょう。

ame3.jpg
ame4.jpg

でも水晶って無色にしろ、シトリンにしろ、煙水晶にしろ、みんなスラッとした
いかにも水晶という形をしているじゃありませんか。
クラスターならそのスラッとした水晶が所狭しと立っている。

ところがアメシストだけはそうじゃない。
柱面のない頭の部分だけが並んでいる。

さらに裏返してみると母岩の色は緑。
中が空洞になった大きな岩の中にアメシストがビッシリ並んでいるカペラも、母岩である表面の色は緑。

kape1_wiki.jpg ga1_wiki.jpg
※画像はウィキペディアより

頭だけ、母岩は緑。
どこのショップで買ってもそこがみんな同じ。
道の駅にも売っていたりするけど、それも同じ。
みなさんの持っているアメシストもたぶん同じはず。

私は思ってました。
アメシストは「こういう形にしかならないんだ」と。

そして鉱物採集を始めて、初めて「おや?」っと思ったのです。
アメシストはどの産地で採集してみても無色の水晶と何ら変わらない柱面が
ちゃんとあるスラッとしたアメシスト。
売っているような見慣れたアメシストはひとつもなかったのだ。

a1.jpga2.jpg
左:宮城県産、 右:石川県産
どちらもしっかり柱面がある。

そこで調べてみて初めて知ったのです。
あの売られているアメシストはほぼすべてブラジル産だということを。
カペラもクラスターも全部ブラジル産。たぶん99パーセントがブラジル産。

特殊だと思っていたあの形。
頭だけで柱面のない、母岩が緑のアメシストはブラジル産の特徴。
とくに母岩の緑はアメシストを採掘するときに入るヒビをしっかりくっつけるための
接着剤入りセメントの色だったのだ。

この時点でようやく私は理解した。アメシストが特殊なのではなく、アメシストの中でも
あのブラジル産のアメシストこそが特殊だったのだ。
特殊なものが市場の大半を占めていたために、アメシスト自体が特殊なのだと勘違いしていたのだ。
私以外にも同じ勘違いをしていた人はいるはずだ、たぶん。


でも、アメシストは世界中で産出するはず。
なぜほとんどがブラジル産なのか。

現在、アメシストの主要な産地は、南アメリカのブラジル、ウルグアイそして中央アフリカのザンビア。

この3ヶ国のアメシストはどれも甲乙つけがたいくらい美しく、それぞれ宝石として加工されている。

しかし、宝石に加工される最高品質のアメシストはほぼ真っ黒に見えるくらい色が濃い。
原石の状態で美しく見えるものは指輪やペンダントに加工すると、石の厚さが薄くなり色が無くなってしまう。

その宝石に適さないものが原石観賞用になるのだけれど、ウルグアイ産とザンビア産には
色溜まり(いろだまり)またはカラーバンドと呼ばれる色の偏りムラがある。
例えば極端だけど、ひとつの結晶の中で半分は紫、半分は無色となっていたりする。

宝石ならば無色の部分を避けてカットすればいいのだけれど、観賞用でのそれは致命的だ。
さらにザンビア産はインクルージョン(内包物)も多く、原石の状態ではなかなか鑑賞に耐えられない。

それらに比べるとブラジル産はカラーバンドもインクルージョンも少ない。
宝石では対等でも原石ではブラジル産が圧勝。

また水晶自体、他の宝石に比べ産出がかなり多く、希少価値があまり高くない。
それゆえ、高い価格設定ができないことから市場のほとんどがブラジル産に
なってしまうのではないのだろうか。

でも個人的にはインクルージョン入りの方が好きだし、カラーバンドが
ものすごく強く出ているアメシストクラスターの方により興味があったりしてますけど。


ブラジル産アメシストの特徴は頭だけの結晶と緑の母岩。
それ以外のものがあったなら、それはかなり珍しいアメジスト。
もし、そんなアメシストを見つけたら、どこ産かも含めて要注目ですよ。


それでは今年もまた一年、よろしくお願いいたします。

 

本文の終わりです
ページの終わりです
先頭にもどります
オンラインショップはこちら