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地球のかけら

【第69回】タンザナイト

2010年11月 1日

1967年、アフリカのある国で、それまでになかったまったく新しいゾイサイトが見つかった。
それは青紫の結晶。光をあてるとまるでその国の夜空のように深く輝いた。
その結晶に心奪われたのがティファニー社当時の社長プラット氏。
彼はそのゾイサイトを宝石として売り出し1980年代のアメリカに一大ブームを巻き起こした。


その宝石の名はタンザナイト。

産出国であるタンザニアのその夜を想い、プラット氏が名付けた宝石名である。

69tanz2_wiki.jpg※画像はウィキペディアより

タンザナイト。
前述のとおりタンザナイトは宝石名であって鉱物名じゃない。
鉱物名はあくまでもゾイサイト(灰簾石:かいれんせき)。

しかし、通常のゾイサイトはモスグリーンの光もあまり通さない単なるかたまり。
有名どころでルビー・イン・ゾイサイトがあるけれど、あくまでも主役はルビーで誰もゾイサイトは見ちゃいないという感じ。
(でも、あのルビーはゾイサイトがベースにあって初めて際だっていると思う)

69ru-zoisite1_wiki.jpg
画像はウィキペディアより
(ルビー・イン・ゾイサイトはミネラルショーで手にはいるよ)
 

また、ピンクのゾイサイトをチューライトと呼んでいて、確かにキレイだけれど、
単純にピンクになったゾイサイトという感じ。
富山県から新潟県にかけての海岸にヒスイが打ち上がるのだけれど、
その中でピンクヒスイといわれているものは実はこのチューライトらしい。

69thu1_wiki.jpg
※画像はウィキペディアより

こんな感じで、どちらかというと地味なゾイサイトの中にあって、青くきわめて透明な結晶を
通常のゾイサイトと区別したくなるのは当然だと思う。

私もタンザナイトはタンザナイトと呼びたいのだ。

それでもやっぱりタンザナイトは宝石名であって鉱物名じゃないと強く思っている人たちもいる。
その人たちはタンザナイトを「ブルーゾイサイトと呼ぶべきだ」といっているんだけれど、
世界中に広がったタンザナイトという名前を覆すことはもう不可能。

苦肉の策として産地であるタンザニアのメレラニ鉱山産のものだけをタンザナイトと呼ぶ、
みたいになったりしている。

でも、最近はタンザニア産以外の「ブルーゾイサイト」もタンザナイトとして売られているから、
だいぶグダグダになってはいるみたいだけれど。



さて、鉱物的な方に話を移すと、バナジウムを含むことによってゾイサイトはタンザナイトになる。
んー、不思議だ。バナジウムを含むだけで、なぜゾイサイトはあんなに美しくなってしまうのだろう。
ちなみにチューライトはマンガン。

また、独特の性質として多色性をもっている。
多色性とは見る角度によって色が違って見えること。
多色性を最も強く持っているのはアイオライト(菫青石:きんせいせき:コーディエライト)で
青に見える位置から90°傾けると、無色に近くなってしまう。
タンザナイトは青紫と赤紫の多色性をもっている。


1980年代から90年代にかけて、ヨーロッパではサファイアのような青が
重視されたために、フェイスアップ(指輪にしたときに真上から石を見ること)で
赤紫が見えないようなカットが好まれていた。
2000年代になってからは、タンザナイトはサファイアではないということから、
あえて多色性を際だたせるカットがされるようになっている。

宝石店でタンザナイトを見るときは多色性も気にかけてみて。
それがいつ頃のカットのものなのかも見えてきて興味深いと思うよ。

ビーズを持っている人はどのくらい色が変わるのか確かめてみてね。

69tannza.jpg

それから、タンザナイトはけっこうもろいということを知っておくべき。
硬度が6~7しかなく、硬いこと(7以上)が条件となる宝石としてはハッキリいって失格の部類。
そこは持ち主が補わなければならないよ。

劈開(へきかい)という、ある決まった方向に割れやすい性質もあるし、
超音波洗浄機なんかを使うのももってのほか。
フローライト(蛍石:ほたるいし)と同じように扱いましょう。 
 

ちょっと取り扱いに気を遣わなければならないタンザナイトだけれど、
それらの欠点を補ってあまりある美しさがタンザナイトにはある。
原石でもビーズでもタンザニアの夜を堪能してください。

69tanz1.jpg

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