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地球のかけら

【第47回】スピネル

2009年2月 1日

やっちゃいました。かかっちゃいましたよインフルエンザ。先週の1週間、辛かったあ。体中が痛くて寝ていることすらできない状態。

さらにカミさんまでぶっ倒れちゃったもんだから、まるまる1週間、我が家のすべての機能が停止しました。
んー、インフルエンザにかかった最大の理由は「自分はかかるわけがない」と思い込んでいたことかな。それが最大の敗因で間違いない。
受験を控えている人はとくにですけど、体調管理には十分気をつけてくださいね。

ところでインフルエンザにかかる前、今回はスピネル(尖晶石:せんしょうせき)について書こうってカミさんと話してたんですよ。

47supi_wiki1.jpg

(画像はウィキペディアより)

病気になったりケガをしたりしないようにするため、昔からお守りとして重宝されていたといえば赤い石。
ルビーは当たり前すぎるから、石好きとしてはやっぱりスピネルだよね。赤い石でインフルエンザなんかぶっ飛ばせ! って感じで。
それなのに自分たちが寝込んじゃったんだから、なんだかなーな感じだね。
まあ、自分たちのことはおいといて、あらためてスピネルについていってみましょ。


で、スピネルっていまだに「ルビーの代用品」とか「大いなる詐欺石」って書いてあったりするのを見かけるんですけど、もういいかげんそういう紹介のしかたてやめるべきじゃないかと思うんだ。

イギリス王室のティムールルビーと黒大使のルビーが実はスピネルだったって話は、石に興味を持ち始めた人にスピネルを紹介するときのきわめて有効な話ではある。でも、それだけなんだよね。

ところで、1000年も2000年も昔って、赤い石っていうとルビーのひとつしかなかったんですよ。
昔は色以外に石の種類を区別する基準なんてなかったんだから、それはしかたがない。

たぶん違う種類なんだろうなってことはわかっていたけど、トルマリンもガーネットもスピネルもその昔は十把一絡げですべてルビーと呼んでいたんです。

その中から成分の違いとか色合いの違いとかで、ガーネットが別れトルマリンが別れ、徐々に名前がついていった次第。

しかし、スピネルはあまりにもルビーに似ていた。


ルビー  Al2O3   硬度 9  
スピネル MgAl2O4 硬度 8

上記はルビーとスピネルの成分だけど、スピネルはマグネシウムが余計に入っているだけ。
産出はどちらも同じところから。ルビーの出るところはスピネルも同時に出る。

硬度も9と8で宝石の基準となる7よりも硬い。ルビーって「すごく硬い」のと「ちょっと硬い」のの2種類あるねっていう認識でしかなかったんだと思う。

しかし、9と8の差は大きい。どちらがより加工しやすいかというと当然8の方。


王様に献上する大粒のルビーを加工するとき、より加工しやすい方を選んでいたことは想像に難くない。
あくまでも私の想像だけど、由緒正しいルビーが実はスピネルだったというのは実は自然なことだったんじゃないだろうか。


スピネルの本来の色は無色透明。

多くは赤。ついで青。
コバルトで青くなったもののなかには、青からピンクへとカラーチェンジするものもあって、それはかなりレアだ。
また、スターやキャッツアイを示すものもある。
 

47supi_wiki2.jpg

 (画像はウィキペディアより)

スピネルファンになると、どうしてもレアな色を探したくなる人が多いんだけど、
けっこうだまされることが多いから気をつけなければいけないよ。

注意点として、スピネルにはもともと黄色とか黄緑とか青緑はない。


ないっていうと正確じゃなくなるから、めったにないってことにしておくんだけど、
たまにその色のスピネルが売られていたりするんですよ。カットされてルースになって。
それらって、ほとんどの場合クリソベリルだったりトルマリンだったり、合成スピネルだったりしてる。

カットされているというところがミソ。
だってカットされたら、石の区別がつかなくなるじゃないですか。
私たち一般人は結晶の形と色合いで石の種類を認識する場合がほとんどなんだけど、まずカットされたらそれがわからない。

さらにレアな色ってことになると、初めから色での判断もできないことになる。

そしたら、売り手のいうことを信じるしかない。
日本のお店はあまり心配いらないんだけど、ミネラルショーあたりに来ている外国人のショップは注意するべきだと思うよ。
レアなスピネルは原石で確認しないと、ちょっと手を出せないね。

スピネルの原石は基本的に正八面体。ピラミッドを上下にくっつけたような形をしている。
ダイヤモンドや蛍石と同じ結晶の種類。
 

47supi_a.jpg


この機会にしっかり憶えておいてくれると嬉しいな。 


ルビーの結晶はこれ。

47rubi.jpg

 

基本は六角柱状。

写真はその断面。スピネルとルビーの見た目の違いはこの形しかないね。

18世紀になってようやくスピネルが化学的に独立した鉱物となったとき、宝石はすでに貴族王族階級に浸透しすぎていた。
18世紀というと300年近く前。十分昔という気はするけれど、宝石の歴史として見るとかなり最近のこと。
スピネルがルビーと別種の石として分類されたのが歴史的に遅すぎた。
トルマリンやガーネットみたいにもっと早く分けられていたら、「大いなる詐欺石」なんて呼ばれることもなかったのに。
すべては人間の科学力が追いついていなかっただけのこと。

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