鉱物趣味も深入りしてくると、人の持っていないちょっと変な石を欲しがり始める傾向があるようだ。
うちのカミさんなんかもすでに片足をつっこんでいて、結晶でもない透明でもない、単なる岩石を見てウットリしている。
・キュリー石
・モナズ石
・ユークセン石
・コルンブ石
・隣灰ウラン鉱
・北投石
・ゼノタイム
・阿武隈石
って、これらの石、聞いたことあります?
「ははーん」って思った人、かなり深入りしています、要注意。
というわけで、これらをひと言でいうならこれ。
放射性鉱物(ほうしゃせいこうぶつ)
ウランとかラジウムとかラドンとか、そういういかにも被爆しそうな危険そうな元素を成分として含んでいる鉱物。
上記以外にも種類としてはたくさんあって、それらの中でウチには北投石(ほくとうせき)とコルンブ石がある。
北投石。
石友からいただいたもの。
ラジウムを多く含んでいるこの石は、台湾の北投温泉で発見されたことからこの名前がついた。
その後、秋田県の玉川温泉でも発見されたが、なんと世界でその2か所でしか確認されていない。
「なんだこれ」という外観とは裏腹に、買おうと思ったら1円玉くらいの大きさで何万円もしてしまう。
半端ないくらいレアなんだけれど、美しさがねー、ないんだよねー。
真っ黒い石がコルンブ石。
上の写真はベリルが母岩。茨城県で採集したもの。
母岩のベリルがコルンブ石の放射線の影響を受けて黄色くなっているのかな? わからないけど。
何万年も一緒にいるんだから影響を受けてても当然ではある。
ところでガイガーカウンターって知ってます? 放射線の量を計るときに用いる計測器。放射線を感知するとガリガリいうやつ。
北投石もコルンブ石もちゃんとガリガリいうんですよ。
さて、ここまでお気楽に書いてきたけれど、放射線といえばかなり危険な印象がある。
放射能の方が危険だと思っている人も多いみたいだけど、「放射線を出す能力を持った物質」のことを放射能と呼んでいるんで基本的には同じもの。
その中でもウランはいわずと知れた原子力発電所の燃料。原爆の原料になる元素。
ラジウムも100年ちょっと前にその研究過程において被爆し、命を落としたというキュリー夫人の話を誰もが一度は聞いたことがあるだろう。
しかし、初めに名前を書いたような放射性鉱物となると、カミさんがいうには危険性はないそうだ。
その理由がこれだ。
「ラジウム温泉とかラドン温泉って入ったことあるでしょ」
おお、なるほど。
確かにそれらは健康にいいような感じがする。っていうか思っている。
でもなぜだ。一方では命に関わることなのに、もう一方で健康にいいかもとは。
気になったので調べてみたところ、「ホルミシス効果」というものがあるらしい。
「大量だと害があるが、少量ならば人体に好影響をおよぼす」というもの。
「毒とクスリの差は服用する量の違いだけ」という言葉を聞いたことがあるが、まさしくそれなのだな。
放射線の量も、肌身離さず持っていさえしなければ国が定めている許容量よりも低い。
ピッタリ肌にくっつけ続けていた場合、北投石などは数か月で許容量を超える可能性があるので注意です。
でもホラ、煙がモクモク出ている温泉でお客さんがみんな岩盤浴をしている映像をテレビとかで見たことありませんか。
そこが北投石の産地。秋田県の玉川温泉。みなさん北投石の上で岩盤浴をしているんです。
放射線の程度としては、そのくらいです。
自然界にはもともと空気中の放射線、地中からの放射線、そして宇宙から来る放射線があって、それは何億年も地球の生態系に影響を与え続けている。
植物、動物そして人間の進化になくてはならなかった放射線に注目するのも興味深いと思う。
そして、それを身近に感じさせてくれる放射性鉱物は重要な存在なのかも知れない。
------------------------------------------------------
ウチから飛騨高山に行く途中、ニュートリノ温泉っていう温泉があったんだよね。
ニュートリノって宇宙から来る放射線のひとつ。
何年か前にノーベル賞を取った小柴博士がニュートリノを研究していた。その研究施設がカミオカンデっていって、すぐ近くにある。
だからニュートリノ温泉なんだと思うんだけど、残念ながら今は流れ葉温泉に名称変更してしまった。
名前が好きだったんだよなあ。なんでニュートリノ温泉やめたかなあ。抗議でもあったのかなあ。ホントに残念だ。
やっちゃいました。かかっちゃいましたよインフルエンザ。先週の1週間、辛かったあ。体中が痛くて寝ていることすらできない状態。
さらにカミさんまでぶっ倒れちゃったもんだから、まるまる1週間、我が家のすべての機能が停止しました。
んー、インフルエンザにかかった最大の理由は「自分はかかるわけがない」と思い込んでいたことかな。それが最大の敗因で間違いない。
受験を控えている人はとくにですけど、体調管理には十分気をつけてくださいね。
ところでインフルエンザにかかる前、今回はスピネル(尖晶石:せんしょうせき)について書こうってカミさんと話してたんですよ。
(画像はウィキペディアより)
病気になったりケガをしたりしないようにするため、昔からお守りとして重宝されていたといえば赤い石。
ルビーは当たり前すぎるから、石好きとしてはやっぱりスピネルだよね。赤い石でインフルエンザなんかぶっ飛ばせ! って感じで。
それなのに自分たちが寝込んじゃったんだから、なんだかなーな感じだね。
まあ、自分たちのことはおいといて、あらためてスピネルについていってみましょ。
で、スピネルっていまだに「ルビーの代用品」とか「大いなる詐欺石」って書いてあったりするのを見かけるんですけど、もういいかげんそういう紹介のしかたてやめるべきじゃないかと思うんだ。
イギリス王室のティムールルビーと黒大使のルビーが実はスピネルだったって話は、石に興味を持ち始めた人にスピネルを紹介するときのきわめて有効な話ではある。でも、それだけなんだよね。
ところで、1000年も2000年も昔って、赤い石っていうとルビーのひとつしかなかったんですよ。
昔は色以外に石の種類を区別する基準なんてなかったんだから、それはしかたがない。
たぶん違う種類なんだろうなってことはわかっていたけど、トルマリンもガーネットもスピネルもその昔は十把一絡げですべてルビーと呼んでいたんです。
その中から成分の違いとか色合いの違いとかで、ガーネットが別れトルマリンが別れ、徐々に名前がついていった次第。
しかし、スピネルはあまりにもルビーに似ていた。
ルビー Al2O3 硬度 9
スピネル MgAl2O4 硬度 8
上記はルビーとスピネルの成分だけど、スピネルはマグネシウムが余計に入っているだけ。
産出はどちらも同じところから。ルビーの出るところはスピネルも同時に出る。
硬度も9と8で宝石の基準となる7よりも硬い。ルビーって「すごく硬い」のと「ちょっと硬い」のの2種類あるねっていう認識でしかなかったんだと思う。
しかし、9と8の差は大きい。どちらがより加工しやすいかというと当然8の方。
王様に献上する大粒のルビーを加工するとき、より加工しやすい方を選んでいたことは想像に難くない。
あくまでも私の想像だけど、由緒正しいルビーが実はスピネルだったというのは実は自然なことだったんじゃないだろうか。
スピネルの本来の色は無色透明。
多くは赤。ついで青。
コバルトで青くなったもののなかには、青からピンクへとカラーチェンジするものもあって、それはかなりレアだ。
また、スターやキャッツアイを示すものもある。
(画像はウィキペディアより)
スピネルファンになると、どうしてもレアな色を探したくなる人が多いんだけど、
けっこうだまされることが多いから気をつけなければいけないよ。
注意点として、スピネルにはもともと黄色とか黄緑とか青緑はない。
ないっていうと正確じゃなくなるから、めったにないってことにしておくんだけど、
たまにその色のスピネルが売られていたりするんですよ。カットされてルースになって。
それらって、ほとんどの場合クリソベリルだったりトルマリンだったり、合成スピネルだったりしてる。
カットされているというところがミソ。
だってカットされたら、石の区別がつかなくなるじゃないですか。
私たち一般人は結晶の形と色合いで石の種類を認識する場合がほとんどなんだけど、まずカットされたらそれがわからない。
さらにレアな色ってことになると、初めから色での判断もできないことになる。
そしたら、売り手のいうことを信じるしかない。
日本のお店はあまり心配いらないんだけど、ミネラルショーあたりに来ている外国人のショップは注意するべきだと思うよ。
レアなスピネルは原石で確認しないと、ちょっと手を出せないね。
スピネルの原石は基本的に正八面体。ピラミッドを上下にくっつけたような形をしている。
ダイヤモンドや蛍石と同じ結晶の種類。
この機会にしっかり憶えておいてくれると嬉しいな。
ルビーの結晶はこれ。
基本は六角柱状。
写真はその断面。スピネルとルビーの見た目の違いはこの形しかないね。
18世紀になってようやくスピネルが化学的に独立した鉱物となったとき、宝石はすでに貴族王族階級に浸透しすぎていた。
18世紀というと300年近く前。十分昔という気はするけれど、宝石の歴史として見るとかなり最近のこと。
スピネルがルビーと別種の石として分類されたのが歴史的に遅すぎた。
トルマリンやガーネットみたいにもっと早く分けられていたら、「大いなる詐欺石」なんて呼ばれることもなかったのに。
すべては人間の科学力が追いついていなかっただけのこと。