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地球のかけら

【第42回】一番身近な鉱物、岩塩

2008年11月15日
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(画像はウィキペディアより)

やあ、オラ岩塩。

立派そうな名前だけど単なる塩だ。
オラたちが普段どこにいるかっていうと、うーん、そうだなスーパーだな。
スーパーで海水から作られた天然塩とかと一緒に並んでいるぞ。
ほとんどの人がオラが欲しくなると近所のスーパーへ買いに行くぞ。
鑑賞するためじゃなくて食うためだけどな。

ところで、オラたちはほとんどが大陸生まれ。太古の昔、海だったところが地殻変動で陸地に変わり、地中にとり残された海水が高い圧力のもと徐々に蒸発していくことで育ったんだ。

結晶の形はいわずと知れた立方体。サイコロの形だ。

静かに静かに、とにかく何万年もそーおっと置かれていたほど立派に育つぞ。
日本では岩塩は見つかってないけど、もしあったとしても地震国だからにぎやかすぎて大きな結晶には育たないだろうな。
そんなわけで、オラたち岩塩は鉱物という印象がどちらかというと薄いけど、れっきとした鉱物だ。
その証拠に鉱物ショップには必ず売っているから、そのへん誤解のないようよろしくたのむぞ。

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えー、岩塩さんに自己紹介していただきました。

確かに塩っていうものはあまりにも身近すぎて、
鉱物だって思っている人はホント少ないだろうね。


一般的に塩っていうとサラサラな塩を思い浮かべるよね。


でもそれは、海水を急激に蒸発させて作っているからであって、四方を海に囲まれた島国日本だからこそできること。ヨーロッパとかに行くと反対に岩塩が一般的だったりしてる。あっちは大陸だからね。


さて、岩塩は鉱物だから、鉱物らしいことを少々。

まず硬度は2。2っていうのはものすごく軟らかい。爪で簡単にキズつくから取り扱いは要注意。
それから岩塩っていっても塩は塩。水をかけると溶けることをお忘れなく。

しかも水をかけなくても梅雨の時季に忘れてほったらかしにすると、こっそり溶けてるからね。あとでショックを受けるよ。

だいたい湿度75パーセントになると怪しくなる。75パーセントってけっこう簡単にいっちゃうから、それが保管のもっとも気を遣うところ。

そうそう、溶けるっていうと、今年の6月に石友が、大切にしていた青い岩塩を溶かしちゃったんですよ。
6月だから勝手に溶けたんだと思うんですけど、気がついたら溶けて食塩水になってたらしくて、青い岩塩だから溶けたら青い食塩水かと思ったら単に透明なだけだったって、さらにガッカリしてた。

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(画像はウィキペディアより)

色の話がでたところで、つづいてはそれ。
岩塩は基本無色透明。でも色つきの岩塩もいる。パステル系の淡い色。
当然、色つきはとっても人気がある。
でも産地が同じならみんな同じ色ってわけじゃない。広大な産地のあっち端はピンクでこっち端は青って具合に偏っている。
色のつく原因は地中にある天然の放射線で、その放射線に長時間当たると結晶に歪みがでて、それが色の原因になるらしい。色の違いは放射線の強弱なのかな。

しかし日光に当て続けたりしてると歪みが直ってそれらの色が消えてしまうから、これも注意。岩塩は歪んだままにしておこう。
中でも一番よく見かけるのはピンクとオレンジが合わさったような色。実際この色が一番産出が多い。
青系はかなり少ないからもし見かけたら、かわいがってあげよう。

おっと、大事なことを忘れてた。

岩塩は何でか知らないけどセレナイト(石膏:せっこう:ジプサム)と共生しやすい性質がある。
セレナイトといっても黄色じゃなくて透明だったりするから気づいてない人も多いみたいで、私たちも自ら経験してそれを知った。

自ら経験っていうのは、あるときカミさんがパスタを茹でるためにモンゴル産の岩塩を使ったんですよ。
そしたら入っていたんですセレナイト。

カミさんはまったく気づかず食べちゃって、口の中でガリガリッ。
相当気持ち悪かったっていうか、ガラスでも入っていたのかってかなりビビってた。
それなのに、いったん岩塩から出てきたセレナイトだってわかったら、もう溶かす溶かす、ムダに岩塩を溶かしてセレナイト採集を始めてた。

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※モンゴル産岩塩と中から出てきたセレナイト。
単なる結晶じゃなくって双晶が出てきたもんだからさらにムダに溶かしてたよ。

でもそれ以来、「セレナイト入り岩塩」っていうことでカミさんのコレクションに入っている。
ちゃんと密閉容器に乾燥剤と一緒に入れられてる。置かれているのは台所だけど。


それでは最後にもうひと言語ってもらいましょう。
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うーん、いいたいことはもうだいぶんいわれたな。
そうだな、オラは「見て楽しい食べて美味しい」すばらしい鉱物だ。
しかも人間が生きていく上でなくてはならないミネラル分。

「敵に塩を送る」なんて慣用句もあるけれど、
慣用句になっている鉱物なんてオラくらいのもんだ。
これかもオラたちをよろしくたのむぞ。
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以上、岩塩さんでした。

 

 

【第41回】アンモライト

2008年11月 1日

先日、静岡県富士吉田市の奇石(きせき)博物館に行ってきた。 
ここは昔の日本産鉱物もたくさん展示されていてとっても見応えがあってよかったですよ。しかも、それ以上にビックリしたことがありました。それは館内のショップにアンモライトが売っていたこと。

アンモナイトじゃないですよ。アンモライトですからね。

アンモライトって化石のアンモナイトの表面がアラゴナイト(あられ石)に被われて七色に光るようになっためずらしい石。
ただでさえ化石として人気の高いアンモナイトが七色に光るんだから、鉱物ファンにとってもアンモライトは魅力的すぎる。

41-anmo1wiki.jpg41-anmo2wiki.jpg 

(画像はウィキペディアより)

もちろん、めずらしいとはいっても、意外に産出は多いから探して見つからないということはない。石を売っているお店なら高確率で置いてある。

でも、高いんですよ。
大きいものになると何万円もしちゃってなかなか手が出せない。

上の写真のように大きなものになると、値段を下げるために分割して売られているんだけど、それじゃあせっかくのアンモナイトの形がわからない。
やはりアンモライトはアンモナイトとしても楽しみたいってのが人情ってもの。
だから、いままでショップのウインドウにへばりついて「はあー、きれいだねー」ってしかいえなかった。

そんなアンモライトが奇石博物館のショップに売っていたのです。
しかも大きさは手のひらサイズ。
しっかり渦をまいていて、アンモナイトの化石であることがハッキリわかる。
そして、値段は3000円。

これなら買える!

断っておきますけど、アンモライトを見て興奮していたのはあくまでもカミさんということでお願いしますね。

それで、そこには20個くらいあったんだけど、カミさんはそれを全部出して並べて、「色の出が悪い」とか「赤がうまく出ていない」とかなかなか選べない。

彼女がいうにはアンモライトの色はアラゴナイトの層の厚さによるもので、層が厚いと赤や緑を発色し、薄いと青系の色を出すらしい。
青系の方がかなりめずらしいようなのだけれど、カミさんはどうしても赤系に惹かれるらしく、どちらかに決められない。私がだいぶ飽きてきた頃にようやく「ふー、5個にまでしぼった」なんていってる始末。
ホントにもー、なんていう私のぼやきを無視しつつ、それまで展示物を見ていたよりも長い時間をかけてようやく選んだ。。
それがこれ。

41-anmoa.JPG


ま、というわけで初めて手にしたアンモライト。やっぱり赤なんだねっていうところ。


さて、私たちが初めてアンモライトを見たのは10年くらい前。確か新潟県糸魚川市にあるフォッサマグナミュージアムだったと思う。

両手を大きく広げたくらいの、ちょっとした丸テーブルくらいのアンモナイトが置いてあって、それが青く光っていたんですよ。
見た瞬間、ホントにガラスの板を上に敷いてテーブルとして部屋に置いたらどんなにいいだろうと思ったことを憶えている。

でも、このときはまだアンモライトというものに対する世間の認知度は限りなくゼロに近く、私たちも知らなかった。
アンモライトは宝石名ということもあるのだけど、確かにそのアンモナイトにも「アンモライト」とは書かれていなかった。

ところで、拙著「宝石・鉱物おもしろガイド」を一番最初に書いたとき、アンモライトについて「青く光る藍鉄鉱になった……」と書いちゃったんだよね。
今はもう訂正してあるんだけど、当時、化石に置き換わる青い石っていうと藍鉄鉱(らんてっこう:ヴィヴィアナイト)くらいしかなかったんだ。


ま、いい訳はおいといて、アンモライトの今の話。
キレイな宝石って必ず模造品が作られるんだけど、アンモライトについては今のところ模造品は作られていない。
でも、もしイミテーションが作られるとしたら、きっとラブラドライトで作られるんじゃないかなって思う。
色の出方が似ていることと、ラブラドライトって基本的に青系でしょ。青系がめずらしいっていうアンモライトのイミテーションにはピッタリ。

そこで憶えておいてほしいのは、ラブラドライトとアンモライトの色の出方の違い。
ラブラドは色の出る方向がハッキリ決まっていて、そこからちょっとでもずれると、もう色なんかぜんぜんわからない。
それに対して、アンモライトはとくにいいものになると全方向360°どこから見ても発色がわかる。しかも一色じゃない。赤系、緑系、もしくは青系のどれが強いかというだけで基本的には全色出る。
杞憂に終わればいいんだけど、イミテーションっていつ登場してくるかわからないから。


それではおまけ。

別の鉱物に置き換わった化石の紹介

○ 貝オパール
二枚貝が化石になるときオパールになったもの。
中には七色の遊色を示すものもある。残念ながらウチにあるものは遊色が出ていない。

 41-kaio.JPG


○ 月のおさがり
巻き貝の中がアゲート(瑪瑙:めのう)もしくはカルセドニー(玉随:ぎょくずい)になったもの。
その後、殻の部分が剥がれ落ちこんな形になった。先端までしっかり残っているものはかなり貴重。

41-tukino2.JPG

 

※「月のおさがり」ってちょっとステキな名前だね。
というわけで、「おさがり」ってどういう意味か調べてみよう!
 

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