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地球のかけら

【第37回】鼈甲&象牙

2008年9月 1日

「石じゃないけど石」のように扱われているもの。
今回は生物が作り出している有機質宝石について。

有名なのは真珠(しんじゅ:パール)、珊瑚(さんご:コーラル)、琥珀(こはく:アンバー)の3つかな。
この3つはいろんなショップで扱われているから知らない人はいないと思う。でも、これ以外にあと2つ知っておいてもらいたいものがある。

宝石というよりも宝飾品といったほうがより適切かもしれないそれは、正倉院にも収められている鼈甲(べっこう:タートルシェル)と象牙(ぞうげ:アイボリー)。

鼈甲はタイマイというウミガメの甲羅で作られていて、黄色、茶色、黒色がまだらのような模様を作っている。とくに黄色いところは透明感があって、琥珀にも似た暖かみのある風合いが特徴的。
江戸時代には徳川家康が鼈甲の眼鏡を使っていたそうだ。

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(画像はウィキペディアより)

象牙はそのままゾウの牙。平たくいっちゃえばゾウの歯、ゾウの骨。
んー、こういっちゃうと、「うえぇ」って思うかもしれないけれど、それに価値を見いだす人がたくさんいた。

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(画像はウィキペディアより)


しかし、この2つはハッキリいって、ぜんぜん身近じゃない。
なんだか、歳のいった人とか大金持ちの人が喜んで持っていそうなイメージ(偏見)がある。
何てったって、元はウミガメとゾウ。それを殺して作るわけだから、大きなものはとてつもない金額になる。
ところが、世の中にはお金持ちというか大金持ちがたくさんいて、過去には先を争うように買いあさったらしい。

そして、当然の結果としてそれらの数は激減。象牙は1989年に、鼈甲は1992年に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」で輸出入が世界的に禁止になった。
なんだか、長ったらしい名前だけど、俗にいう「ワシントン条約」のことね。英語の頭文字をとって「CITES(サイテス)」ともいうらしい。

よって、現在、日本にある鼈甲と象牙はその条約以前に輸入されたもの。 
だから、そのときに買ってた人って、すでにある程度の歳になっている。それで、どうしても「年寄りの金持ちが……」ってイメージになるのかも。


そういうわけで、私も自分で買ったことは一度もない。
カミさんは若かりし頃に香港で買ったという象牙の印鑑を持っている。なかなか重量感があって、龍みたいなのも彫ってあったりして、高級そうな感じがする。
(現在、外国でそれらを買っても、日本に帰ってきたとき税関で没収されます)

(象牙の印鑑,象牙の印鑑断面の写真入る)
※ホンモノの象牙は右の写真のように断面に少しカーブのかかった格子模様が入る。


しかし、そのカミさんもさすがに鼈甲は持っていなかった。

ところが、あったんですよ。鼈甲で作られた櫛(くし)と簪(かんざし)が。

何と私の91歳になろうかという、ばあちゃんが持っていたんです。
4年前、ばあちゃんの引き出しの奥の方から出てきたんです。

なんともやさしい手触りに暖かみのある風合い。それが、鼈甲を見た初めてでした。

残念ながら、ばあちゃんは何がなんだかわからなくなっているため、それがいつのものなのか、どこから来たものなのか、教えてもらうことはできませんでした。

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そこでいろいろ親戚に訊いてまわったところ、ばあちゃんが嫁入りの時に「ばあちゃんのお母様」が持たせてくれたものだということがわかりました。
しかも、そのお母様が嫁入りしたときにはすでにあったということもわかり、たぶん、「お母様のお母様」が持たせてくれたもの何じゃないかと考えているわけなんです。
ということは、少なくとも明治のもの。100年は経っている鼈甲だったんです。

さらに、そのとき一緒に日露戦争の勲章とかも出てきてしまいまして、ワタクシ感激にむせび泣いてしまいました。

なんだか、我が家のお宝自慢のようになってしまっちゃいましたが、間違いなくこれらは家宝なのです。
現在、勲章は実家に、ばあちゃんの櫛と簪は額に入れ、我が家にしっかり飾ってあります。

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この鼈甲と象牙、前述しましたが、まだ在庫として日本に残っております。大きいものはどうにも手が出ませんが、アクセサリーくらいの小さいものならば、10000円以下から買えます。

でも、やっぱり良心が痛むんですよね。
これらはイミテーション推奨です。鼈甲はプラスチックでそっくりなものがたくさんあります。
象牙だって聞くところによると「牛乳の中に含まれるカゼインというタンパク質」と「酸化チタン(ルチルのことですよ。ちょっとビックリ)」を使って、ほとんど同じものを作れるそうです。

現代に生きる私たちは、これらイミテーションをもって、タイマイそしてゾウの供養といたしましょう。

 

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しまったーっ! 失敗したーっ!
何が失敗したかって、前回か前々回に「季節を先取りしてみなさんに情報をうんぬん」と誓ったばかりだったのに、8月30日・31日の名古屋ショーの案内を忘れていた!
というわけで、今年、これから開催されるミネラルショーをここで紹介しておきます。
名古屋ショーは私たちも用事があって行けなかったのだけど、京都ショーには必ず行きたいと思っています。


第9回「石の祭典」2008さっぽろショー
会  場:北海道札幌市 さっぽろテレビ塔2階 展示会場
開催日程:9月20日(土)~22日(月)

国際ミネラルアート&ジェム展
会  場:東京都新宿区 新宿第一生命ビル1F スペースセブンイベント会場
開催日程10月3日(金)~6日(月)

第20回 石ふしぎ大発見展(京都ショー)
会  場:京都左京区 京都市勧業館<みやこめっせ> 地下1階 第1展示場
開催日程:10月11日(土)~13日(祝)

第17回東京ミネラルショー(池袋ショー)
会  場:東京都豊島区 サンシャインシティ文化会館 2階展示ホール
開催日程:12月12日(金)~15日(月)

入場料が必要なところもあります。詳しいことはインターネットですぐに検索できますから、それぞれ確認してくださいね。

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こっそり、おまけ。ワシントン条約その後。
南部アフリカのいくつかの国では、保護されたことによるゾウの急増で農作物が荒らされるなど農業被害が出ているそうです。
日本で農作物を荒らすのはサルやシカだけど、アフリカでのそれはゾウなんだね。レベルが違うわ。

 

 

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