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地球のかけら

【第38回】水晶はこの結晶面を見て

2008年9月15日

非常に基本的なことだけど、みなさん、水晶ってどんな形かハッキリわかっているかな。
ちょっと想像してみて。できれば絵を描いてみて。
水晶だからうろ覚えでも大丈夫だと思うけど、そう、柱面は長方形、錐面は三角形だよね。六角柱の上に六角錐がポチッと載っている感じ。
全体としては柱面が6つと錐面が6つの全部で12の面でできている。これが水晶の基本形。
(ダブルポイントは今回の話の中に含まれていませんよ)

しかし、実際の水晶はこのとおりの形であることの方が少ない。

 

ひとつの面が異常に大きくなっていたり、小さくなっていたりするもの。12の面以外の面を持つもの。さらに、なければいけない、あるはずのものがなかったりする水晶がある。
これらは、どれもちょっと特殊な水晶だから、パワーストーンファンには特別な存在。それらの中で代表的なものを取りあげてみるね。


やけに大きな面と小さな面を持つ、タビークリスタル(ショベルクリスタル)。

38-dubby1.JPG

 

基本には忠実でちゃんと12の面を持っているんだけど、錐面のひとつが異常に大きくなっている。
ほとんどの人はこの大きな面に注目するんだけど、一面が大きい分、異常に小さくなっている面があることに気づいている人は少ないんだよね。
 
基本形と比較して、どこがどうなってそんな形になっているのか考えてみるのも楽しみ方のひとつだよ。


13番目の面を持つ、マスタークリスタル。

38-master1.jpg

 

柱面と錐面の境に平行四辺形の面ができている。鉱物的にはこの平行四辺形の向きで右水晶・左水晶なんて呼んだりしてるけど、パワーストーン的にはこれをタイムリンクといって、右向きをフューチャー(未来)タイムリンク、左向きをパスト(過去)タイムリンクといっているみたい。
このタイムリンクが平行四辺形でなくひし形(◇:トランプのダイヤの形)になって、4つの角がキチッと上下左右を向いたらウインドウと呼び名がかわるんだよね。

実はこのマスタークリスタル、13番目の面を持つどころか14番目・15番目の面を持つものもたくさんある。
そういう特殊な面を持つものの総称がマスタークリスタルなのだと思った方が正解。だから前述したタビークリスタルもマスタークリスタルの一部といった方がいいかも。

このマスタークリスタル、その面の数、形、向きに対して全部名前がついている。
どんな名前がついているのか調べてみるのも楽しそうなんだけれど、それにはちょっと問題があるんだよ。
何が問題かっていうと、それはパワーストーン界の大御所が勝手に名前をつけていること。
名前をつけること自体はたいした問題じゃない。問題はその大御所が一人じゃなくて世界中に何人もいて、それぞれが勝手に名前をつけていることなんだ。
そしたらもう名前だけで膨大な数になって、とても憶えられるものじゃない。しかもどれが正しいっていうのはないんだから。


話を元に戻して、なぜか一面おきに条線のない柱面のある、レムリアンシード。

38-remu1.JPG

 

条線というのはどんな鉱物にもたいていあるもので、いわば結晶が成長するときにつく成長痕のようなもの。
水晶の場合は柱面に横に入っている。ちなみにトパーズは縦に入っていて、これが水晶とトパーズを見分けるときの決め手のひとつになる。
   
で、水晶は通常6つの柱面すべてにこの条線があるんだけれど、なぜかレムリアンシードと呼ばれる水晶は一面おきの3面にしか条線がない。
ハーキマーダイヤモンドなどは一面も条線がないんだけれど、それは結晶ができたときの条件が特殊だったことによるもので、不思議なことじゃない。

しかし、一面おきというのは不思議だ。面ごとに条件が違っていたとも考えづらいし、もしそうなら条線のある面とない面が連続しているものもあってしかるべき。一面おきというところに不思議がある。


いやあ、こんな風に見ていくと、最初にも書いたけど正六角柱で頭の先端がその中心に来ている、横から見て左右対称のキッチリとした水晶って少ないどころじゃないような気がしてきた。
そういうキッチリした水晶をジェネレーターっていうんだけど、そう思ってウチにある水晶を全部見てみた。1本もなかったよ。

ここまで書きながら考えてきて、水晶っていったい何をもって水晶っていえるんだろうって思った。
成分とかそういうのじゃなくて、あくまで形で考えてみてどうだろう。
自分でも何をいっているのかよくわかんなくなってきたんだけど、水晶の中で「これだけは何があっても変わりません」というものはないのかな。

そこで調べてみた。すると水晶には「面角一定の法則」というものがあって、どんなにヘンテコリンな形をしている水晶でも、隣り合った柱面は必ず120°を保っているそうなんだ。

何だかぜんぜん一貫性がないように思えてきた水晶だったけど、面角一定の法則という「これだけは譲れない」ってものをちゃんと持っていた。
これからは水晶を表すキーワードを「120°」にするっていうのはどうだろう?


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☆ お知らせでーっす!!

私たちの鉱物採集がNHKに取材されました。

前半は家での取材。我が家のコレクションがたっぷり紹介されます。
後半は採集風景。2か所の産地でトパーズとベリル(アクアマリン)を探します。

・トパーズの産地はおなじみの場所。
 どんなところでトパーズを探しているのか。どんなふうに見つけるのか。
 達人たちとともに大物をねらいます。その後の「お宝自慢大会」は必見。
・そして、ベリルは私たちにとって「初めての産地」での採集。
 見事、見つけられるのか! ということ以前に、産地にたどり着けるのか?!

わずか20分ほどですが、私たちの採集スタイルがよくわかります。


熱中時間
http://www.nhk.or.jp/nj/index.html

9月30日 BSハイビジョン
10月2日 BS2
10月中旬 総合

での放送です。
ぜひご覧下さい。乞うご期待!

 

【第37回】鼈甲&象牙

2008年9月 1日

「石じゃないけど石」のように扱われているもの。
今回は生物が作り出している有機質宝石について。

有名なのは真珠(しんじゅ:パール)、珊瑚(さんご:コーラル)、琥珀(こはく:アンバー)の3つかな。
この3つはいろんなショップで扱われているから知らない人はいないと思う。でも、これ以外にあと2つ知っておいてもらいたいものがある。

宝石というよりも宝飾品といったほうがより適切かもしれないそれは、正倉院にも収められている鼈甲(べっこう:タートルシェル)と象牙(ぞうげ:アイボリー)。

鼈甲はタイマイというウミガメの甲羅で作られていて、黄色、茶色、黒色がまだらのような模様を作っている。とくに黄色いところは透明感があって、琥珀にも似た暖かみのある風合いが特徴的。
江戸時代には徳川家康が鼈甲の眼鏡を使っていたそうだ。

37-taimaiwiki.jpg

 

37-bekkoawiki.jpg

(画像はウィキペディアより)

象牙はそのままゾウの牙。平たくいっちゃえばゾウの歯、ゾウの骨。
んー、こういっちゃうと、「うえぇ」って思うかもしれないけれど、それに価値を見いだす人がたくさんいた。

37-zouwiki.jpg

 

37-zougeawiki.jpg

(画像はウィキペディアより)


しかし、この2つはハッキリいって、ぜんぜん身近じゃない。
なんだか、歳のいった人とか大金持ちの人が喜んで持っていそうなイメージ(偏見)がある。
何てったって、元はウミガメとゾウ。それを殺して作るわけだから、大きなものはとてつもない金額になる。
ところが、世の中にはお金持ちというか大金持ちがたくさんいて、過去には先を争うように買いあさったらしい。

そして、当然の結果としてそれらの数は激減。象牙は1989年に、鼈甲は1992年に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」で輸出入が世界的に禁止になった。
なんだか、長ったらしい名前だけど、俗にいう「ワシントン条約」のことね。英語の頭文字をとって「CITES(サイテス)」ともいうらしい。

よって、現在、日本にある鼈甲と象牙はその条約以前に輸入されたもの。 
だから、そのときに買ってた人って、すでにある程度の歳になっている。それで、どうしても「年寄りの金持ちが……」ってイメージになるのかも。


そういうわけで、私も自分で買ったことは一度もない。
カミさんは若かりし頃に香港で買ったという象牙の印鑑を持っている。なかなか重量感があって、龍みたいなのも彫ってあったりして、高級そうな感じがする。
(現在、外国でそれらを買っても、日本に帰ってきたとき税関で没収されます)

(象牙の印鑑,象牙の印鑑断面の写真入る)
※ホンモノの象牙は右の写真のように断面に少しカーブのかかった格子模様が入る。


しかし、そのカミさんもさすがに鼈甲は持っていなかった。

ところが、あったんですよ。鼈甲で作られた櫛(くし)と簪(かんざし)が。

何と私の91歳になろうかという、ばあちゃんが持っていたんです。
4年前、ばあちゃんの引き出しの奥の方から出てきたんです。

なんともやさしい手触りに暖かみのある風合い。それが、鼈甲を見た初めてでした。

残念ながら、ばあちゃんは何がなんだかわからなくなっているため、それがいつのものなのか、どこから来たものなのか、教えてもらうことはできませんでした。

37-kanzasia.jpg

 

37-kanzasib.jpg

 

37-kanzasic.jpg

 

そこでいろいろ親戚に訊いてまわったところ、ばあちゃんが嫁入りの時に「ばあちゃんのお母様」が持たせてくれたものだということがわかりました。
しかも、そのお母様が嫁入りしたときにはすでにあったということもわかり、たぶん、「お母様のお母様」が持たせてくれたもの何じゃないかと考えているわけなんです。
ということは、少なくとも明治のもの。100年は経っている鼈甲だったんです。

さらに、そのとき一緒に日露戦争の勲章とかも出てきてしまいまして、ワタクシ感激にむせび泣いてしまいました。

なんだか、我が家のお宝自慢のようになってしまっちゃいましたが、間違いなくこれらは家宝なのです。
現在、勲章は実家に、ばあちゃんの櫛と簪は額に入れ、我が家にしっかり飾ってあります。

37-bekkou.jpg

 

この鼈甲と象牙、前述しましたが、まだ在庫として日本に残っております。大きいものはどうにも手が出ませんが、アクセサリーくらいの小さいものならば、10000円以下から買えます。

でも、やっぱり良心が痛むんですよね。
これらはイミテーション推奨です。鼈甲はプラスチックでそっくりなものがたくさんあります。
象牙だって聞くところによると「牛乳の中に含まれるカゼインというタンパク質」と「酸化チタン(ルチルのことですよ。ちょっとビックリ)」を使って、ほとんど同じものを作れるそうです。

現代に生きる私たちは、これらイミテーションをもって、タイマイそしてゾウの供養といたしましょう。

 

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しまったーっ! 失敗したーっ!
何が失敗したかって、前回か前々回に「季節を先取りしてみなさんに情報をうんぬん」と誓ったばかりだったのに、8月30日・31日の名古屋ショーの案内を忘れていた!
というわけで、今年、これから開催されるミネラルショーをここで紹介しておきます。
名古屋ショーは私たちも用事があって行けなかったのだけど、京都ショーには必ず行きたいと思っています。


第9回「石の祭典」2008さっぽろショー
会  場:北海道札幌市 さっぽろテレビ塔2階 展示会場
開催日程:9月20日(土)~22日(月)

国際ミネラルアート&ジェム展
会  場:東京都新宿区 新宿第一生命ビル1F スペースセブンイベント会場
開催日程10月3日(金)~6日(月)

第20回 石ふしぎ大発見展(京都ショー)
会  場:京都左京区 京都市勧業館<みやこめっせ> 地下1階 第1展示場
開催日程:10月11日(土)~13日(祝)

第17回東京ミネラルショー(池袋ショー)
会  場:東京都豊島区 サンシャインシティ文化会館 2階展示ホール
開催日程:12月12日(金)~15日(月)

入場料が必要なところもあります。詳しいことはインターネットですぐに検索できますから、それぞれ確認してくださいね。

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こっそり、おまけ。ワシントン条約その後。
南部アフリカのいくつかの国では、保護されたことによるゾウの急増で農作物が荒らされるなど農業被害が出ているそうです。
日本で農作物を荒らすのはサルやシカだけど、アフリカでのそれはゾウなんだね。レベルが違うわ。

 

 

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