残すところ夏休みもあと半月。
どうですか、宿題はもう終わりましたか?
今年は8月31日が日曜日。一日ズレていれば、ちょっと得した気分になれたのに残念です。
そういえば最近は28日くらいから2学期の始まる小中学校が増えてきているようですね。なんだか「8月31日の想い出」が共有できなくなりつつあることがちょっと寂しいです。
それに対し大学なんかだと9月15日までとか、ムダに9月いっぱい休みだったりして、それはそれでちょっと問題なんじゃないかと思ったりもします。
ま、そういう私の出身校も9月15日まで夏休みだったわけなんですが、9月に入ってからの休みはなんだか罪悪感があって、ずっと引きこもっていた記憶もあるようなないような……。
さて、私の思い出話なんかは置いといて、夏休みですから、何か「見て楽しい遊んで楽しい」ような石はないかなと考えてみました。
見て楽しいというのは、「キレイだな」というのではなく、「なにこれ、不思議だなー」というような石。
ということで、まずは複屈折(ふくくっせつ)を持った石なんでどうでしょう。
複屈折とはその石を通して向こう側を見ると、その景色が二重になって見える現象のこと。
そのような性質を示す最も身近な石はカルサイト(方解石:ほうかいせき)。
みなさん、カルサイトっていうとオレンジやイエローの丸玉しか持ってないってことありませんか。
純粋なカルサイトの結晶は無色でものすごく透明。3方向に割れやすい劈開(へきかい)という性質があって、写真のように劈開で割れてすべての面が平行四辺形になっているものが、形の上でもカルサイト性質がもっともよく現れているもの。
(画像はウィキペディアより)
カルサイトファンって多いよね。ファンの人はぜひ自然に近い結晶でカルサイトの不思議を楽しんでください。
それで、何で二重になって見えるのかというと、
光学軸に対する電場ベクトルが偏光の向きに対して2つの異なる物質の屈折率を与えることで説明される。
ってことらしいんですけど、何をいっているのか理解できません。
続いてこんな石はどお?
テレビ石!
正確にはウレキサイト(曹灰硼石:そうかいほうせき)というんだけど、テレビ石という方がよっぽどこの石の特徴を表している。
写真だとちょっとわかりづらいですが、石の下にある絵が石の表面に浮かび上がっている。
まるでテレビの画面みたい。だからテレビ石。
この石はこれでひとつの結晶というわけでなく、透明な繊維状の結晶が平行に整列した状態で石の形をなしている。
ようするに透明な細い紐がぎゅっと束になった状態で固まった石なんだ。その紐が透明だから光ファイバーとまったく同じ効果を発揮して、横に光を漏らさず縦にだけ光を通す。それでこんなふうに見えるんだ。
石にあまり詳しくない人にこの石を見せてあげると、必ずみんな驚くよ。
私も初めて見たときはビックリしました。
それでは最後に「遊んで楽しい」石。
それはある年代以上の人にはとても懐かしいもの。
ろう石!!
カミさんが子供の頃これでさんざん遊んだんだって。
硬度1の滑石を主成分としたこの石でどう遊ぶのかというと、「道路に落書き」なのです。
ああ、それかあ! って思ってくれた人はいるかな。
落書きするならチョークかなって思うけど、ろう石はとっても書き味なめらかでしっかり描ける。
しかも、チョークは石灰の粉末を固めただけだからすぐになくなっちゃうけど、ろう石は石だからなかなかなくならない。
私もとっても楽しかったです。
写真のろう石は今回新たに買ったろう石とカミさんの弟が小学生の頃使っていたろう石。
年季が入っています。もともとは同じように真っ白だったはずです。
今回は「見て楽しい遊んで楽しい」石を紹介してみました。カルサイトやテレビ石のその性質をまだ見たことのない人はぜひこの機会にショップに足を運んでみてください。
ろう石は石のショップには売っていませんよ。最近はやりの「昭和の駄菓子屋」ショップってあるでしょ。そこに売っていました。2個で100円です。
---- ろう石ちょっといい話 ----
それは何十年も前に岡山県のある鉱山で採掘されていたろう石の話。
そのろう石には細かいパイライトがたくさん入っていて、それが金色に光って子供たちにけっこう人気があったんです。
それで、バンバン採掘してたら当然のことながら脈が尽きてしまい、惜しまれながらも鉱山は閉山になりました。
ところが、閉山したあと学者さんがあらためてその成分などを調べたところ、パイライトだと思われていたものは実はかなり純度の高いホンモノの金だったってことがわかって大騒ぎ。
しかし、時すでに遅し。金は何も知らない子供たちによって道路の落書きへと姿を変えてしまったあとでしたとさ。
太陽光と蛍光灯で青緑、白熱灯で赤に見えるアレキサンドライト。そして、丸いカボッションにカットされたその真ん中に一条の光のスジが入り、まるで猫の目のように見えるキャッツアイ。
今回はアレキサンドライトとキャッツアイの2本立てです。
え? それって、1本立てでしょって思った人はいるかな。
それとも、逆にそう聞いて「なんで1本立て?」って思った人の方が多いかな。
そうなんですよね、私も最初は信じられませんでした。だって似ても似つかないでしょ。まさかこの2つが同じ石だなんて。
この2つの石、鉱物的にはどちらもクリソベリル(金緑石:きんりょくせき)ということになる。んー、でも単なるクリソベリルというよりも、その変種という感じだね。
(画像はウィキペディアより)
ところで、クリソベリルって売っているところ見たことある?
そうなんですよ。この石って淡い黄緑でキレイはキレイなんだけど地味なんですよ。だから鉱物を専門に扱っているようなお店じゃないと売っていない。
クリソベリルには悪いけど、ハッキリいってこの石よりキレイな石はいくらでもあるんです。
ところが! ところがですよ、アレキサンドライトそしてキャッツアイという個性を与えられた瞬間、クリソベリルはこれでもかというくらいに輝きを放つんです。
ロシア皇帝アレキサンドル2世の誕生日にロシアで見つかったことからこの名前がつけられたアレキサンドライト。
(画像はウィキペディアより)
それにしても、なんで色変わりがおこるのか。
>黄色系スペクトルを吸収するクロムを含有し、また石が反射する光に赤色要素と緑色要素の両方が平均的に存在し、青みが強い光線の元では青色系の色を、赤みが強い光線の元では赤色系の色を反射するためである(wikipediaより抜粋)。
なんだか難しいこと書いてあるけど、まあ黄色い光は反射しないっていってるんだね。
だから、紫外線の多いところでは青く、そうでないところでは赤いっていうんだと思う。
とにかくアレキサンドライトは色変わりが命。色変わりのよくわからないアレキはただのクリソベリル。選ぶときは少しでもハッキリ色変わりするものを選びましょう。
そして、もうひとつの個性、キャッツアイ。
こちらは1000年以上も古くから知られている石で、その昔から「眉間に当てると先見の明が得られる」といわれていたり「魔よけ」の効果があるといわれているんだ。
(画像はウィキペディアより)
猫の目のように光る一条の光の線はシャトヤンシー効果と呼ばれるもの。
これこそがキャッツアイたるゆえん。小さい針状の鉱物が内包物として規則正しく整列する事によって発生している。
そして、キッチリ整列していればしているほど、鋭い眼光が光る。
でも、カボッションにしたとき、石の厚みが厚いほどシャトヤンシーはハッキリ出て、薄くなるとぼやけて来るという点がちと困りもの。
なぜ困るのかというと、シャトヤンシーを優先すればするほど、同じカラット数だったとしたら石が小さく見えてしまうからなんですよ。
ある程度見応えのある大きさで、さらにシャトヤンシーのハッキリしたもを選ぶと、値段がどんどん上昇していってしまう。それが最大の問題なんだよね。
それから色もかな。光を横から当てたとき、シャトヤンシーを挟んで左右で色が違う。ハニーイエローとアップルグリーン。これがもっとも価値が高いとされている。
本当はそういうのがいいんだけど、そうとう数が少ないから少しでも近いものを見つけられたらいいね。
最近はトルマリンキャッツアイとかローズクオーツキャッツアイとか、キャッツアイと名のつく石がたくさんあるけれど、キャッツアイはあくまでもシャトヤンシー効果のこと。けして石の名前なわけではない。
クリソベリルキャッツアイだけが、その歴史を鑑みて「キャッツアイ」とひとことで呼ぶ慣習になっている。
さて、ここまでクリソベリルを特集してきたわけだけど、当然のことながら、この2つの個性を兼ね備えたアレキサンドライト・キャッツアイもある。
これは、アレキサンドライトの一種として存在している。けして「クリソベリルキャッツアイが色変わりする」ものではないので注意してください。
そういえば、タイガーズアイ(タイガーアイ)もシャトヤンシーを示すよね。
この石もカボッションにカットしたら「タイガーズアイキャッツアイ」ってなるのかな。
タイガーズアイ(タイガーアイ)についてはアスベストに石英がしみ込んでできているから、ハッキリ別物。
シャトヤンシーはシャトヤンシーだけど「虎目」って名前がちゃんとついているんだから、わざわざ「猫目」にする必要はないってことです。
さあ、夏休みも本番。
私なんか8月になった時点で「もう夏休み終わっちゃう」って悲しくなっていたんですけど、みなさんはいかがですか。
事故などに気をつけてステキな夏を過ごしてくださいね。