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地球のかけら

【第34回】カイヤナイト

2008年7月15日

梅雨明けしましたか?
梅雨は一部の鉱物にとっても、心配な季節。
岩塩とかパイライトとか湿気に弱い鉱物がありますから、それらを持っている人は乾燥剤と一緒にケースに入れておくなど十分気をつかってあげてくださいね。
え、もっと早くにいえって?
うー、ごめんなさい。いつもそのときに思っていることを書いてるんで、記事になってアップされるときには若干ではあるけれどズレているときがあるんだよね。
はい、これからはちゃんと季節を先取りして書こうと思います。

というわけで、夏ですねー。
夏っていうと、もちろん人によって違うけど、どんな石が似合うと思いますか。
イメージ的にどんな色がもっとも夏っぽいですか。

「夏! 夏こそ激辛カレーだっ! だから情熱の赤だ!!」 
ていう人も中にはいらっしゃいますかね。
んー、そういうのもアリですけど、周りにいる人は暑苦しいだけかもしれないですねえ。

ここはやはりオーソドックスに青でいきましょう。
で、青い石というとサファイア、アイオライトなどいろいろありますが、この夏、私の一押しはカイヤナイト(藍晶石:らんしょうせき)です。
それも原石ではなくビーズ。
あれ? 原石好きじゃなかったの? なんていわれそうですが、なぜかカイヤナイトは原石よりもビーズの方が美しいものが多い気がする。
とくに透明度の高いビーズは他のどんな石よりもさわやか。口の中に入れるとシュワシュワーってとけてしまいそうな炭酸飲料系。
そんなカイヤナイトで作ったアクセサリーはとっても涼しそう。

下の写真はカイヤナイトとルチルクオーツでウチのカミさんが自作したブレスレット。

34-kaiyanaitotorutirukuotunoburesu.JPG

 

写真じゃちょっとわかりにくいんだけど、カイヤナイトはどんなに透明度が高くなっても線というかスジが入っている。
これがカイヤナイトの特徴で、そのスジの方向が結晶の縦方向。

34-kaiyanaito1.JPG

 

原石を手に取ってみると一目瞭然。非常に薄いカイヤナイトの板状結晶が何万枚も何億枚も張り合わされたようになっていて、爪でコリコリっとすると雲母(うんも)のように簡単にはがれてしまう。それがスジの原因。
そして、そのスジが元でビーズになったときシャトヤンシーのようなシラーのような一条の光のスジが見えるんだ。

さっき、理由はないけど涼しさを感じると書いたのは、たぶんそれら全部をまとめて、水が流れているように感じるからなのかもしれない。まるでその中に小さな魚が泳いでいるような、そんな錯覚さえ起こしてしまいそう。

夏を気持ちよくすごすために、カイヤナイトで涼しげな自分を演出してくださいね。
 
そこでふたつほどこの石の取り扱い上の注意。
先にも書いたけど、カイヤナイトの原石は爪でコリコリしただけでもはがれてくるような石。
よって、ビーズになっても衝撃にはとても弱いから十分注意してほしい。大きな衝撃を与えると、そのスジに沿ってパッカリ割れちゃうからね。

 

それから、カイヤナイトにはおもしろい性質があって結晶の横方向にはほとんどキズがつかないけど、縦方向には簡単にキズがついてしまう。
縦と横で硬度が違う。確か4と7.5。
7.5の方はいいんだけど、4っていったら蛍石(フローライト)と同じ。ものすごくキズつきやすい。
このことからカイヤナイトは二硬石(にこうせき)という別名もつけられている。
カッターで傷つけてみるとすぐにわかるけど、そんなこと試してみる人はいないよね。


さて、最後にいっておかなくちゃいけないことがあります。
夏はキレイな石を身につけてあちこちお出かけしたくなるじゃないですか。太陽の光を反射して石たちだって、これでもかっていうくらいキラキラ輝いてくれます。

しかし、そんな夏だからこそ気をつけなければならない石もあることに注意しなければなりません。

まず第一に、「紫外線で退色する」石。
有名どころでは紫水晶(アメジスト)。濃いものならばそうそう色落ちしないけれど、夏が終わったときになんだか黄色っぽくなっているかもしれません。
毎日ちょっとずつだとホント気がつかないからね。窓辺に置いて直射日光が当たり続けるなんてもってのほかだよ。

次に「汗でとける」石。
真珠なんかのネックレスを持っている人はなるべくつけないようにした方がいい。人間のお肌は弱酸性ですから、ゆっくりゆっくりとけていくんです。
ということは、真珠と同じ成分のサンゴ、方解石(ほうかいせき:カルサイト)、霰石(あられいし:アラゴナイト)もアウトだね。
それでもつけて出かけなきゃいけないとき。そういうときは帰ってきてからしっかり乾いたタオルで汚れを拭き取ってね。

それからパイライトあたりの金属系もあまりよろしくない。とけるだけならまだいいんだけれど、汗と化学変化を起こしてお肌に悪影響をおよぼすこともありえる。
こういうことを知らないで、「お守りだったはずの石にひどい目にあわされた」なんて思われたら、ハッキリいって石がかわいそう。
でも、直接お肌に触れなければ大丈夫だからね。

そういえば、先日カミさんの友達がラピスのネックレスをつけたまま温泉に入ったんだって。
とけたって。
あ、ラピス自体はとけないよ。ラピスの中にキラキラ光っている粒があるでしょ。あれパイライトなんですよ。それがとけたって。せっかくのラピスが穴だらけになったっていうんだから、石にとっても本人にとっても不幸なことこのうえない。泣いたってさ。

というわけで、温泉は酸性のお湯がアウトです。
お湯をなめてみて、ちょっと酸味があるようならその温泉は酸性です。ご注意を。
草津温泉なんて酸性が強すぎてブヘッてはきだしちゃったもんな。
ま、温泉は夏に限らないけどね。

そういうわけで、みなさんのステキな夏の想い出を、石たちで上手に演出いたしましょ。

 

【第33回】レインボーガーネット

2008年7月 1日

採集に行くとたいていどこの産地でもお仲間に出会う。たいていは石の話で盛り上がるんだけど、採集歴20年・30年という大先輩に会ったときはたいへんだ。
まあ、「昔は良かった」という話をとうとうと聞かされる訳なんだけど、どうにも信じられないような内容で大げさに話しているとしか思えないことが多い。

「昔、○○山は足元一面水晶だったよ。△△谷はガーネットだらけだったね」
「いくらでもあったよ。探すなんてことしなくてよかったんだから」
「いかに他人よりいいものを見つけるかだけが問題だったね」
「今はさみしいね。探さないと見つからないんだから」

そりゃ、鉱物採集が今よりさらにマイナーだった頃は、誰も採りになんて来ていないんだからたくさんあったのは間違いないだろうけど、さすがにこんな話は信じられない。きっと、何十年も経つうちに思い出が美化しただけだろう。
「へー」とか「ほー」とか相づちを打ちながらも「話半分以下」と思って聞いていた。

33-reinbow1.jpg

 

33-reinbow2.jpgのサムネール画像

 

33-reinbow3.jpg

 

33-reinbow4.jpg

 

上の写真はアンドラダイトガーネット(灰鉄石榴石:かいてつざくろいし)の一種、レインボーガーネット。

通常、水晶とか天然石のレインボーというと、結晶に入ったクラックで光が屈折し七色に見える現象のことをいうよね。
でも、このガーネットは結晶自体がレインボーを作り出す構造になっている。
なんでも、目に見えないくらいの薄い層が幾重にも重なってできているらしく、それらの層に光が当たることにより七色の光を放つんだそうだ。
だから、地層と同じで地表からは地層が見えないから、結晶面がハッキリしているものは、いまいちレインボーがわからない。
反対に割れて形が悪くなったものほど、地層がむき出しになっているのと同じってことでキレイなレインボーがでる。
結晶の形が整っていて、さらにレインボーがバッチリ出るのが最高なのだけど、残念ながらそのようなものはない。
結晶好きの私としては「あちらを立てればこちらが立たず」という、なかなかじれったい石なのだ。 

33-reinbow a.jpg

 

33-reinbow b.jpg

 

33-reinbow c.jpg

 

33-reinbow d.jpg

 

それにしても、レインボーガーネットを採集したときのことは、まるで昨日のことのように憶えている。
なぜなら、その場に行っただけでこれほど感動した産地は、後にも先にもここ以外お目にかかったことがなかったからだ。


産地が発見されてまだ半年ほどしか経っていなかった頃、多くの採集家が噂だけで、その場所を特定できていなかったとき。
運良くその場所を知ることができた私たちは、いても立ってもいられず車を走らせた。

奈良県天川村、とある山の登山道入り口。
吊り橋を渡り深い森が続く登山道に入る。またげる程度の小川を3つほど越えたところで道は少し大きめの水のない沢にでた。
道はそれに沿ってさらに奥へと続いており、道なりに進もうとしたそのとき、沢をはさんだ反対側の斜面がキラキラッと輝いた。 

私たちは顔を見合わせ、その斜面に駆け寄った。
そして、ついに信じられない光景を目の当たりにしたのだった。

「え?! 何これ……」

ガーネットが斜面を覆い尽くしていた。
「うそ……」
震える両手で水をすくうように足元の土をすくい上げてみる。そこにはガーネットが数え切れないほど含まれていた。

それらを木漏れ日にかざす。

でた! レインボーだ!

七色を発したそれは紛れもなくレインボーガーネットだった。そう、私たちはレインボーガーネットの上に立っていた。 

再び風が吹き、木立が揺れ木漏れ日が斜面を移動する。

キラキラキラキラキラ……

それに合わせて斜面が輝いた。

緑に覆われた暗い森の中、それはまるで地上に降りた天の川だった。

「探す必要なんてなかった……」
こういうことか。これが大先輩たちがさんざんいっていた「昔は良かった」なのか。

「他人よりいいものを……」
そうだ、ここに落ちているのはどれも小指の爪の大きさもない。
ここからが本番だ。
親指の爪以上のガーネットを見つけたい。さらに群晶があったらもっと嬉しい。

近くを流れる川のせせらぎと鳥の声、そしてサクサクというガーネットを探す私たちの音だけが小さくいつまでも森の中にこだましていた。

33-reinbow x.jpg

 

33-reinbow y.jpg

 

33-reinbow z.jpg

 


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文中にある「とある山」とは行者還岳(ぎょうじゃがえりだけ)のことです。
この産地は私たちが訪れた数ヶ月後に採集禁止になりました。
しかし、この斜面は登山道のすぐ脇にあります。採集はできないけれどトレッキングついでに産地を見てみるのもいいと思いますよ。健康的だし。
それに、けっして大変な場所じゃないんですよ。しかも車を降りてから15分も歩いてない。
 

33-shamen.jpg


 

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