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地球のかけら

【第32回】アホとパパゴ

2008年6月15日

「私、ダイヤモンドよりアホとパパゴのセットがいいな」

これは、カミさんの友人の発言である。
結婚10周年を記念して彼女のご主人が「ダイヤの指輪をプレゼントしたいな」と提案したときの反応だそうだ。

この話を聞いたとき、カミさんは私の顔をじっと見てこういった。

「私もそれがいいな……」


さて、アホとパパゴについてであるが、アホはアホー石(アジョイト)で淡い水色をした石。パパゴはパパゴ石(パパゴアイト)のことで濃い青が魅力的な石。
語源はアメリカで発見されたとき、一帯に居住していた原住民のパパゴ族とその町のアホにちなんでいる。

aho.jpg

アホー石

Papagoite(wikiより).jpg

パパゴ石

 

石の性質としては、どちらも銅の二次鉱物。
二次鉱物とは一度できた鉱物が、地表で風雨にさらされたり酸性とかアルカリ性とかの影響を受けて違った物質に変化したもの。
たとえば、鉄サビは鉄の二次鉱物といえる。
有名どころでは孔雀石(くじゃくいし:マラカイト)が銅の二次鉱物だね。


ところで、実は私たち夫婦もそろそろ結婚して10年になるのだが、さっき私を「じっと見て」と書いたのだが、それは明らかにそれを「買え」というメッセージだ。

そこでちょっとネットで検索してみたところ。なんだかあんまり透明感のない地味な石が引っかかってきた。
 
「石好きも極まるとこんな訳のわかんないものに走っちゃうようになるのかな」
なんて思いながら金額をチェックしてみると、両方合わせても1万円ちょっとしかしない。
ダイヤモンドは10万円も20万円も払なければならないことを考えると、これはずいぶん安上がりである。

さすが主婦。うちのカミさんもさっきの彼女も、家計を守る良き妻であった。

ところが、それらの写真を見せた瞬間。
「フフン」と、カミさんが鼻で笑ったのだ。そしておもむろにこういった。

「そんな石、欲しいわけないでしょ」

え?! 

「欲しいのは、イン・クオーツよ。イン・ク・オ・オ・ツ!」

へ?

「アホとかパパゴが中に入っている水晶のことよ」

あらためて「アホ,水晶」「パパゴ,水晶」で検索してみる。
すると、出てくる出てくる。水晶の中にまるでシミのようにぼんやり入っているアホとパパゴの写真。
そして驚愕の事実が。

「ななまんえん? はちまんえん?」
ナニカナ? このゼロの数。

!!
ふたつ合わせたら余裕で10万円を超えるじゃないですか。ダイヤモンドとあんまり変わんないじゃないですか。

前言撤回!
カミさんは家計のことなど考えてはいなかった。ただ、欲望のおもむくままに「欲しい」といっていただけだったのだ。

「この石は水晶に入ってナンボなのよ!」

スゴイ。何がスゴイって金額がスゴイ。キレイなものは1センチ1万円という感じだ。しかもそれは水晶の大きさで、アホやパパゴの大きさではない。
どこに入っているかわからないようなものでも、数万円の値段が付いている。

なぜこんなに高いのだ。
なんとこのアホ入りおよびパパゴ入りの水晶は、南アフリカのメッシーナ鉱山というところからしか産出しないうえ、すでに閉山していたからなのだ。
閉山ということは新たな産出がないということ。現在市場に出ているものがなくなればそれでお終いなのである。
アホー石入り水晶、パパゴ石入り水晶は今後さらに値上り間違いなし。

はい。セットで欲しいといった意味がわかりました。


ところで、アホもパパゴも先述の通り銅の二次鉱物である。メッシーナ鉱山も銅鉱山だった。日本にも銅鉱山はたくさんある。二次鉱物もある。
ということは日本でもアホとかパパゴ入りの水晶があるかもしれない。今までまったく気にしていなかったけれど、これからはそれらも探してみなければならない。
もし見つけたら、大発見だ。

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プレゼント企画で、たくさんのご質問をいただきました。
それらは私たちのホームページ「辰尾良二&くみ子のホームページ」内「石の地平線」にて順次お答えしていきますので、ぜひご覧ください。

 

 


 

【第31回】クンツァイト

2008年6月 1日

「国産鉱物詰め合わせセット」のプレゼント企画にたくさんのご応募をいただき、ありがとうございました。
ただいま厳正なる抽選をおこなっておりますので当選メールを楽しみにお待ちください。

さて、プレゼントの中のひとつにあったレピドライトはとっても人気のある石ですよね。プレゼント企画のところにも書きましたけど、この石は宝石になっているトルマリンと同じ産地で見つかるんですよ。
いや、同じ産地でというのは不正確かな。
いい直します。
「トルマリンはこのレピドライトの中に入っているんです」

おおー!

もちろん必ず入っているとはいえないけれど、当選した人はぜひ探してみてくださいね。


というわけで、今回はレピドライトの話……ではなく、その中に入っている石について。

あれ? それってトルマリンでしょ。
って思いました? 思いますよね。でもトルマリンのことじゃないんです。トルマリンともうひとつ、誰もが知っている○○○O○○についてなのです。


クイズです。
この○○○O○○に当てはまる名前はなんでしょう?
(このパターン一回やったな)

ヒント1
○○○O○○は宝石名でカタカナ6文字です。

ヒント2
その名前は1902年に発見者の○○○博士にちなんでつけられました。

ヒント3
質のいいものは透明で淡いピンク色です。

ヒント4
多色性があり、見る方向で色の濃さが変わります。

ラストヒント
緑色をしたものはヒデナイトと呼ばれます。

 

正解はクンツァイトでした。ちなみに博士の名前はクンツ博士。

31-kuntaito(kesshoutate).JPG

 

31-kuntaito(kesshouyoko).JPG

 

クンツァイトはトルマリン、レピドライトと切っても切り離せない仲。兄弟・姉妹といってもいい過ぎじゃないくらい近い関係なのです。

どう近いかっていうと、日本名を見れば一目瞭然。
レピドライト ⇒ リチア雲母
クンツァイト ⇒ リチア輝石
トルマリン  ⇒ リチア電気石
そう「リチア」の部分が共通してるでしょ。

リチアっていうのは元素の名前でリチウムのこと。原子番号3番。「スイヘーリーベ」の「リ」。リチウム電池のリチウムなんですよ。
このリチウムを主成分としているところが同じなんです。

ところで、宝石が生まれるところは何通りかあるんですけど、その代表的なものにペグマタイトって呼ばれるところがあるんですよ。
マグマが地下深くで固まるときに、含まれていた水分やガスが1か所に集中して固まったところ。
宝石はそのペグマタイトで育つんですけど、リチウムを含むペグマタイトはとてもめずらしくて、日本に3か所しかない。たまたまリチウムを含んでいた場合、この3つの石が生まれるのです。


みなさん。
トルマリンとレピドライトとクンツァイトは地質学的にセットなんです。
三位一体ということで、揃えてみるのもおもしろいですよ。

 

31-pinktorumarin.JPGのサムネール画像

ピンクトルマリン

31-repidoraito.JPG

レピドライト

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おまけ:英名は正確に発音できない
リチアっていう名前なんだけど、本によってはリシア電気石とかリシア雲母とか「リシア」って書いているものがたまにある。

どっちが正しいんだろうって思ってフォッサマグナミュージアムの学芸員の先生に聞いてみたところ、「発音の違いでしょ。どっちでもいいんじゃない?」というお答え。
あらあら、それでいいの? って感じ。
そういえば、紫水晶も私はずっとアメジストと書いてきたんだよね。でも、最近はアメシストって「シ」に濁点がついてないことの方が多いんですよ。
発音の違いだからどっちでもいいっていえばどっちでもいいんだけど、語源になったギリシャ神話を見ると「アメシスト」なんだよね。濁点ついてないんだよね。

トパーズはトパズ、オパールはオパルとか、なんか違和感ありすぎ。
クンツァイトの鉱物名であるスポデューメンだって、スポデュミンとかスポジュミンとか本によって違う。
どれが本当? って悩んじゃうけど、結論としては「あんまり気にしなくてもいいんじゃない?」ってことで落ち着きそうです。
日本人なんだから英語の発音がうまくできなくてもしょうがないじゃんね。
アバウトでオッケー。

 

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