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地球のかけら

【第30回】田上山のトパーズ

2008年5月15日

滋賀県大津市に田上山(たのかみやま)っていうトパーズの名産地があるんですよ。

昨年、私たちがさんざんトパーズ採集に通っていた岐阜県中津川市よりも有名で、たぶん日本一有名なトパーズ産地。
鉱物採集を始めたときから「行きたい、行きたい」と思っていたんだけれど、徒歩2時間という距離に縁遠さを感じこれまで一度も行ったことがなかった。

その田上山に4月27日ついに行ってきたんです。
石友が1時間もかからない最短距離で案内してくれるということで、これはチャンスとばかりに同行をお願いしたんです。

ところで、田上山ではどれほどのトパーズが採集できるのか。そんなに有名ならば、さぞやすごいトパーズが採れるんだろうって思うよね。
ところが、実はあんまり採れない。ていうか、ほとんど採れない。いつも行っている岐阜県中津川市の方がよっぽどたくさん出る。
それなのに、なぜそんなに私たちは行きたいのか。さらになぜ日本一有名なのか。

それは今から20年ほど前、大人が10人入ってもまだ余裕なくらいの日本一巨大な晶洞が発見されていたからなのだ。


晶洞とはマグマが地下深くで固まるとき、マグマの体積が小さくなることに伴って生まれる空洞のことで、大半の宝石はその晶洞の中で育つ。
拳ひとつ、もしくはふたつ程度の大きさが通常。宝石もそのサイズに合わせた大きさで成長する。


そして、そのときから田上山は「聖地」となったのだ。

田上山へ行かねばならぬ。

もうほとんど採れないなんてことは関係ない。発見者の名前をとって「中沢晶洞(なかざわしょうどう)」と呼ばれるその晶洞を、鉱物ファンとして「一度でいいから見てみたい」というただそれだけのことなのだ。

この採集旅をひと言でいうなら、……「聖地巡礼」である。


田上山のふもと、不動寺というところの林道に車を停めた。
参加者は案内をお願いしたMK氏以下、女性4名を含む総勢12名。大所帯である。
きっと、全員が私たちと同じ聖なる気持ちを持っての参加に違いない。

トレッキングシューズを履き、リュックを背負う。
徒歩2時間といわれている正当なコースをはずれ森を突っ切る。MK氏のおかげで、何度も休憩していたにもかかわらず、本当に1時間もかからず到着してしまった。

そしてそれは急な斜面の途中に口を開けていた。

30-nakasawashoudou.jpg

 

思わず手を合わせたりして。
洞窟ではなく、あくまでも晶洞。信じられないほど巨大。

身をかがめドキドキしながら晶洞に足を踏み入れる。ひんやりとした空気が身体を包んだ。
目が慣れてくると晶洞の全体が見えてきた。先はどのくらい続いているのだろうか、奥の方は真っ暗で何も見えない。
上下左右をぐるっと見回してみると、意外にも天上は高く万歳してもぜんぜん届かない。
壁に目を近づけじっくりと観察する。カミさんはしゃがみ込んで足元の砂をクマデで引っ掻いていた。

しかし、すでにのべ何千人もの採集家が訪れたであろう晶洞の中には、やはり何も残っていなかった。
しかし、そこから掘り出された砂が斜面を覆っている。その中にはトパーズがあるかもしれない。
日の光に照らされて斜面のあちこちがキラキラ光っている。いやギランギラン輝いている。

しかし、それは雲母だった。斜面で光っているものは全部雲母。もう雲母だらけ。
ここの雲母は益富雲母(ますとみうんも)といって非常にめずらしい雲母だけれど、雲母は雲母。サンプルとして1個採集したら後は無視。
トパーズは透明で光を透過するから、よっぱど太陽との角度があわないと光らない。
 

30-topa-zu1.JPG

 

中津川市のトパーズに比べると、あまり形は整っていないかな。でも、これだけでもよく残っていてくれたものです。

まったくといっていいほど見つからなかった。わかってはいたけれど、これだけ見つからないとさすがに飽きてくる。そしてそれは他のメンバーも同じだった。


いったん山を下り車に戻って休憩の後、同じ田上山にある別の場所へと向かった。
夕暮れまでそこで採集をしていたんだけど、そこもやはり同じ。カミさんが1個見つけただけだった。

30-topa-zu2.JPG

 

というわけで、採集の成果というとまったくダメダメな部類にはいるのだけれど、いいのだ、今回はあくまでも中沢晶洞に手を合わせることが目的だったのだ。だったのだ。だったのだ。


後日いろいろ田上山について調べてみたところ、この山は山全体が花崗岩(かこうがん)でできていることがわかった。
花崗岩と一口にいってもよくわからないと思うが、要するに晶洞は花崗岩の中ならばどこにでもできている可能性があるということなのだ。
中沢晶洞もその中のひとつにすぎないことは確実。
田上山は広い。まだまだ誰にも気づかれずに隠れている晶洞があるはず。まだまだ通ってみる価値はありそうだ。

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プレゼント企画!!

3回目となりましたプレゼント企画。
「日本産鉱物詰め合わせセット」を10名様にプレゼント。

トパーズ(岐阜県中津川市産)
水晶クラスター(石川県小松市産)
アメジストクォーツ(紫石英:石川県小松市産)
スモーキークォーツ(岐阜県中津川市産)
フローライト(岐阜県関市産)
レピドライト(茨城県常陸太田市産)
ネフライト(富山県朝日町産)
グロッシュラーガーネット(岐阜県関市産)
オブシディアン(長野県長和町産)

以上が入る予定です。

30-settohitoribun.JPG

だいたいこんな感じです。
※ 今回のプレゼントのメインはトパーズです。
  小さなものなので、それだけだとさみしいと思いセットにしました。
※ レピドライトは現在は採集禁止になっているトルマリン産地のものです。
  よって、中にピンクトルマリンが入っている可能性ありです。
※ 種類が多いので石データを付けます(岐阜県多いなー)。
※ 写真にはアメジストクォーツとフローライトは写っていません。

ご感想・ご要望をたくさん書いていただけると当選しやすくなります(ウソ)。
でも、いっぱい書いてあると嬉しいです。
たくさんのご応募お待ちしております。

 

【第29回】桜石&アイオライト

2008年5月 1日
29-sakura1.jpg

 

写真は桜石(さくらいし)です。

思いっきり桜の花びら模様、写真ではわかりづらいけど若干ピンクなんですよ。
この季節にピッタリの桜石、かっわいいでしょう!

え? 桜はもう終わってるって?
うう、すいません。ホントは4月の頭に紹介しようと思ってたんですけど、忘れてました。
でも、北海道あたりは今がちょうど満開くらい。だからギリギリOKってことで。


さて、英名でチェリーストーンとかセラサイトとか呼ばれたりもしてる桜石だけど、私的には日本語でしっかり「さくらいし」と呼んでもらいたいんだ。
なぜかっていうと、この石の唯一の産地が日本だから。
しかも京都。
おおー。
これで英名で呼ぶなんて野暮ってもんでしょ、でしょ。


ところでこの桜石、もともとはアイオライトだったっていうんですよ。

「ええーっ?!」

って声が聞こえてきそうだけど、私も初めてそれを知ったとき「うっそだー」って思った。だって、似ても似つかないもの。

アイオライトはサファイアよりもちょっと薄い青がきれいな透明な石、だよね。

29-aio1.jpg

 

それがなんで桜石になるのか。
アイオライトの結晶が長い時間をかけて分解していき、空いた空間に雲母(うんも:マイカ)が入り込む。すると、アイオライトの形だけを残した雲母ができあがるんだって。
それが桜石。
こういうふうにできた石のことを仮晶(かしょう)というらしい。だから、桜石はアイオライトの仮晶ってことになるのかな。鉱物的には単なる雲母なんだけどね。

29-sakura2.jpg


写真のとおり、桜石はなんだかわからない形をしている。これの断面が桜の模様。金太郎飴のようにどこを切っても桜。雲母だからナイフでスッと切れちゃうよ。


桜石のことを書いたら、やっぱりアイオライトのことも書かないとね。
日本名を菫青石(きんせいせき:コーディエライト)っていって、名前のとおり菫(すみれ)色。
この石の最大の特徴は多色性があること。見る角度によって色が違って見える。
濃い青に見える角度から90°傾けてみると、モノによっては無色になってしまう。だから石好きとしては、多色性がハッキリしているものを選びたいところ。

アクセサリーになっている場合は色をハッキリ見せなきゃいけないから、多色性がわかりにくいのはしかたがない。
ハッキリわかるのはビーズとかルースかな。特にルースでは石好き人間のために45°傾けてカットされているものもあって、右半分は透明、左半分は青っていうのもある。

29-aio2.jpg

 


これからの時期、各地でミネラルショーが開催されるね。普段、めったにお目にかからない石とかがたくさん出品されるから目の保養にもなると思う。
大阪はちょっと前に終わっちゃったけど、新宿とか名古屋とか京都とか大都市では必ず開催されるから、ぜひ足を運んでみたら楽しいよ。
桜石も探してみてね。

 

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