ねえ、今回アゲートについてなんだけど、アゲートってメノウのことだよね。
そうよ。
でさ、登場人物が多すぎて分けわかんないんだけど。
そうね、確かにちょっとした違いでどんどん名前はかわるわね。
ほら、カーネリアンとかジャスパーとかオニキスとか、どれがどれだかよくわかんないんだよ。このままじゃ原稿書けないんだよ。ねえ、ちゃんと教えてくんない。
ええー、ちゃんとって、今まで何度も教えてるじゃない。
教えてるって、君が勝手にしゃべってるだけじゃん。憶えてないよ!
かっ勝手にって……、ちょっと何それ。
あ、あ、ごめんごめん。
こ、今度はちゃんと聞くからお願い、教えて。
……わかったわよ。ちゃんと聞くのね。
う、うん。
じゃあ、まずはちゃんと定義しましょ。
定義? 定義って何?
どういうふうに区別されてるかってことなんだけど、とりあえず大元は石英よ二酸化珪素。
うん。それは知ってる。
その石英の中でね、結晶するとかしないとか、どういうふうに固まるとかで種類が分かれるの。
水晶・オパール・天然ガラス、そして玉随(ぎょくずい)のだいたい4つのグループかな。
ふーん。
水晶はわかるわよね。その中でアメジストとかシトリンとかに分かれるの。
オパールはまあ、あのオパール。遊色があるとかないとかね。
天然ガラスは黒曜石(オプシディアン)とかモルダバイトとか。
で、メノウとかは石英の粒がぎゅっと固まった玉随グループの中に含まれるのよ。
玉随グループ?
でも、玉随っていう石もちゃんとあるじゃん。
それは、水晶グループの中にアメジストやシトリンと並んで無色の水晶があるのといっしょ。玉随グループの中にもちゃんと玉随(カルセドニー)があって、メノウとは区別されているの。
じゃあ、どういうふうに区別されてんの?
うん。登場人物としては玉随グループの中が一番たくさんいるの。さっきいってたカーネリアンとかオニキスとかも玉随グループの中の石ね。ここが多すぎてぐちゃぐちゃになっちゃうのかな。
そうだよ。毎回、名前と色を君に教えてもらうけどさ、5分後には忘れてるもん。
ああ、そうなの。
で、基本は無色。無色の玉随があって、それに色がついていろいろ分かれるの。
玉随
ってことは、玉随が縞々になったらメノウってこと?
平たくいえばそうね。その中で色の組み合わせでまた名前がつくのよ。
赤と白の縞メノウはサードニクス。
サードニクス
黒白はオニキス。
水色と白ならブルーレースアゲートね。
ちなみにオニキスのビーズはみんな真っ黒なのよね。黒い部分しか使ってないのね。
赤と青とか黒と赤とかはないの?
それは……、見たことないなあ。うん、ない。ないんだと思うよ。
え、でもさ、お土産とかになってるメノウのコースターっていろんな色があるよ。
あれは、着色だもん。メノウってすごく着色しやすい石だから、そういうのがたくさん出回ってるの。キレイだから悪いとはいわないけど、天然にはないということね。
それから、メノウはね中が空洞になっていて、そこに水晶がビッシリはえているものがあるのよ。
よく売っているやつね。半分に切って中が見えるようになっているメノウ。あれはきれいだと思うな。
あ、水入りメノウっていうのもウチにあるじゃん。ジャブジャブ音のするやつ。
そうそう、その空洞の中に太古の水が取り残されてるのね。なんかすごいよね。
最近よく聞く天眼石もメノウだよね。あれは何なの?
天眼石
天眼石は商品名よ。チベットアゲートとかアイアゲートとかの名前になっていることもあるし。
縞々を上手にカットして目のように見せているだけだから、赤いものはサードニクス、黒いものはオニキスよ。
ふーん。最初にいってたオニキスはメノウだってわかったよ。じゃあ、カーネリアンとかジャスパーってなんなの?
赤くなった玉随がカーネリアンなのよ。
ほかに緑色のクリソプレース、青いブルーカルセドニーあたりが有名ね。
これらは玉随グループの中にある玉随たちよ。縞がなくて一色なの。
カーネリアンってここに入るんだ。でもジャスパーも一色じゃなかった?
カーネリアン
ジャスパー(青玉)
ジャスパー(赤玉)
ジャスパーはね碧玉(へきぎょく)っていって、やっぱり玉随グループのなかのひとつなのよ。
ええーっ、ジャスパーも一色なんだから玉随でいいんじゃないの?
それはダメ。
このグループの石は色の原因が他と違うのよ。
メノウと玉随はイオンによる発色でその石が色を持っているんだけど、ジャスパーは違う鉱物が入り込んで色がついているの。
だから、透明感がないの。佐渡の赤玉や出雲の青玉も碧玉ね。
ふーん。じゃあ玉随グループにはメノウグループと玉随グループと碧玉グループがあるってこと?
そういうこと。わかった?
……どうかな。
……。
ところでさあ、知ってる? オニキスで作られているイタリアンジュエリー。
えっ? メノウって宝飾品になってるんだ。
そうよ、すんごくキレイなの。私もひとつ欲しいんだけどな。
へー、なに?
カ・メ・オ。
……カメオ?
そう、石に人物像とか風景とかを彫り込んで作るの。
オニキスの黒い部分を下地にして白いところを彫るのね。どんどん彫っていくとね、下地の黒い部分が透けてきて、グラデーションがとってもキレイなの。
え? それって貝でできているのなら見たことあるけど。
それは、シェルカメオ。
オニキスの代用品として貝殻を使っているのよ。貝殻だと簡単に削れるからね。
へー、でもそういうのって機械で彫ってるんじゃないの?
最近は大量生産でそういうのもあるかもしれないけど、いい物は職人の手彫りよ。
詳しいじゃん。
わたし、カメオの工場を見に行ったことあるもん。
高いの?
2センチくらいの小さいものなら5万円くらいかな。
あそ。
┌ メノウ:アゲート
┌─┐ 水晶 │ (サードニクス・オニキス・ブルーレースアゲート)
│ 石│ 玉随────┼─玉随:カルセドニー
│ 英│ オパール │ (カーネリアン・クリソプレース・ブルーカルセドニー)
└─┘ 天然ガラス └ 碧玉:ジャスパー
(青玉・赤玉)
3月っていうと誕生石はアクアマリン。アクアマリンは名前の通り、海のような淡い青が美しい石。でも、アクアマリンは一回紹介してるよね。
今回は同じ青つながりってことで、曹珪灰石(そうけいかいせき、または、ソーダけいかいせき)を紹介するよ。
ところで、曹珪灰石って、わざと日本語で書いているからね。大人気のこの石がなんという石か、どこでわかるかな。
※ すでにわかっちゃったっていう人。早すぎです。
さて、この曹珪灰石はほかに白や緑がかったもの、そしてピンクっぽいものもあるけど、一番人気は青。
青一色というよりも青空に雲が浮かんでいる感じ。印象としては空なんだけど、流通名は海にちなんでいて、それが一般的。
層珪灰石自体は18世紀に発見されていたんだけど、青が発見されたのは1974年でかなり最近のこと。ショップに並びはじめたのは1990年くらいから。
ちょうどこの頃、カミさんがさっそく買いに行ったらしいんだけど、高くて手が出なかったらしい。
そういうわけで、この石は一般に認知されるようになってから、まだ20年くらいしかたっていない本当に新しい石なんだ。
最近は世界各地で見つかりはじめているけれど、発見されてからしばらくはドミニカ共和国からの産出しかなかった。それなのにじゃんじゃん採掘したため、今はもうほとんど枯渇状態らしい。
だから高い。ビーズでもラピスのいいものより高い印象がある。もともと青い石って人気あるしね。
※ ここでわかった人、なかなかやりますな。もっとドップリ石に浸かりましょう。
さて、曹珪灰石の英名はギリシャ語の「凝結する(ペクトス)」からきている。
ペクトスと聞けば、「ああ、ペクトライトね」と思う人も多いんじゃないかな。
「凝結する」というとおり結晶は細かく針状で、それがギュッと固まっている。ヒスイ(硬玉:ジェダイト)や結晶でないインカローズ(菱マンガン鉱:ロードクロサイト)と同じタイプ。見た目も、まるで青いインカローズのようなものもある。並べて床の間に飾りたいね。
ところで、昔から青い石は「心を落ち着かせる」とか「冷静になる」といわれているよね。じゃあ、この石もそうなのかというとちょっと違う。
この石は基本的に「愛と平和」を表し「平穏と友情」をもたらしてくれる。
また「自分を愛すること」もできるようになるらしい。他人に愛をあたえるために、まず「自分の中に愛をためよう」ってことなのかな。
※ この時点でわかった人は、普通(……す、すみません)。
というわけで、この石の名前は……
ラリマー
でした。
※ え? なにそれ。って思った人。
それはいけない。早くショップに行ってラリマーを見てくるのだ。
ラリマーの語源は発見者のミゲル・メンデス氏が娘の名前の「ラリッサ」とスペイン語で海を表す「マール」から作った。もう宝石名として定着しているね。
ラリマーも青一色の方が価値が高いんだろうけど、それじゃトルコ石と色が似ているから勘違いされそう。ラリマーの方がきめが細かくて透明だけど。
カミさんは少し白が入っていた方がラリマーっぽくって好きなんだって。でも、青一色のラリマーなんて見たことないけどね。