私は普段、学習塾で受験指導をしているんだけど、毎年この時期になると受験生全員に「石のお守り」を渡すことにしているんだ。
ほら、「受験は水物」っていうじゃない。いくらしっかり努力して勉強してても、当日の体調や気持ちひとつでうまく行ったり行かなかったり。
もちろんそんなことは皆わかっているんだけど、わかっているからこそ当日のことを想像して不安になっちゃうんだよね。
で、なんで石のお守りを渡すかっていうことなんだけど、石のお守りは「わかりやすい」んだよ。
「これは受験に効きます」ではなくて、「心を落ち着かせてくれる」「洞察力を得られる」という感じで今の自分に足りないものを具体的に補ってくれる。
「そんなの効くわけねーよ」っていう生徒もいるけど、自分に都合のいいものは何でも味方につけたいもの。なんだかんだいっても、それらの言葉を聞いただけで潜在意識に刷り込まれてしまうんだ。すでに効き始めているってこと。言霊ってやつだよね。
それで、生徒たちひとりひとりの性格に合わせて3つで一組にしているんだけど、作ってみると組合わせとしてはだいたい2通りができる。
まず、1つめの石。
ソーダライト。これはひとりひとりに必ずつけている石。
☆強い意志と鋭い直感力を養ってくれる
これは絶対に必要なことだからね。
ソーダライトを鉱物的に見ると、日本名は方曹達石(ほうソーダせき)。
準長石といって長石に非常に似ているけれどちょっと違う。長石に準する石のグループに属している。
ラピス・ラズリも同じ仲間。ラピスよりも透明感があって紫がかった青をしている。また、硫黄を含むと以前蛍光鉱物として紹介したハックマナイトになる。
2つめの石。
タイガーズアイ。これもみんなにつけている。
☆洞察力や決断力を養う
これも絶対必要。
鉛筆を転がして決めていたんじゃしょうがないからね。
まあそれも、決断方法としては間違っちゃいないと思うけど。
日本名を虎目石(とらめいし)というこの石は青石綿(あおいしわた:クロシドライト)に石英がしみ込んで固まったもの。
そのままだと青くてホークスアイと呼ばれる。酸化すると黄色くなってタイガーズアイになる。さらに酸化するとレッドタイガーズアイになる。
そして3つめの石。これが2通りに分かれる。
ひとつはヘマタイト。
☆自信と勇気をもたらし勝利へ導く石
「私ダメかもー」「こんな問題私にはムリ」なんて、すぐにあきらめちゃったり本番に弱いと思っている生徒には絶対必要。
紀元前900年のアッシリア帝国では護符として使用されていた。
貧血、出血とか血が足りない時に補うためのものだったらしい。
ヘマタイトは鉄鉱石だから、あながち間違っちゃいないね。
そしてもうひとつは水晶。
☆それぞれの石の持つ力を増大させる石
水晶はあらためて説明する必要はないよね。
前述した2つの石だけで十分だって生徒には、3つめの石として上記の意味で水晶をつけている。
ところで、プレナイト(葡萄石:ぶどういし)っていう石がある。
その名の通り色も形も葡萄そっくり。無色や青っぽいものもあるけど一般的には淡いグリーン。マスカット色だね。
この石は1790年にオランダのH・ボン・プレーンという人が発見したことからこの名前がついた。比較的新しい石。
この石が持つといわれている効能は以下の通り。
☆根気強さが身につく
☆物事の真実を見抜く力が養われる
☆大量の情報の中から必要なものを選択する力が備わる
この石があれば1個でこと足りちゃいそうなんだよね。でも、手に入りにくいんだ。もし見つけたら手に入れておくべき石だと思うよ。
さあ、やるだけやったら果報は寝て待て。
一瞬一瞬を大切に全力を尽くしてくださいね。
これらの石が少しでもみんなの役に立てばいいなって思ってます。
前回に引き続きガーネットの特集だよ。
まず最初に紹介したいのはアルマンディンガーネット。
日本名:鉄礬石榴石(てつばんざくろいし)。
鉄とアルミニウムを主成分としたこの石は、私たちが初めて採集した記念すべき石。
アルマンダインとかアルマンダイトとも呼ばれたりする。
見て、この深い赤。
パッと見には黒っぱい地味な石だけど、光を通すとこんなにすばらしい赤になる。
そしてこの形。24の面を持つ丸っこい結晶はこれぞガーネットという形。
手のひらにのせてコロコロしたらカワイイのなんのって。
このアルマンディンは特に日本中いたるところにある。
しばらく前、地元の川で砂金を探したとき、砂金はサッパリだったにもかかわらず、このアルマンディンが大量に見つかったことがあった。
つづいて、次はスペサルティン。スペサタイトとも呼ばれるこの石の日本名は満礬石榴石(まんばんざくろいし)。
マンガンとアルミニウムが主成分のこの石は基本的にキレイなオレンジ色をしている。
写真は以前紹介したパイロクスマンガン石を産出する愛知県の田口鉱山で見つけたスペサルティン。
今のところ、この産地ではどんなに大きくても5ミリくらいのものが最大。昨年1センチ級を見つけたっていう話も聞いたけど、この色のままで1センチもあるんだとしたら、それはみごとだ。私も絶対に欲しい。
そしてもうひとつ。
長野県の諏訪湖近く。和田村(現長和町)で採集したスペサルティン。
この石は見たとおり真っ黒。
マンガンかアルミニウムかわからないけど、どちらかが多すぎて色が濃くなりすぎた。
でも、この黒さっぷりがみごと。
この産地の特徴は信じられないくらい結晶面がなめらかでシャープなこと。確実に自分の顔が映ります。
さらに、よーく見ると、細長い六角形の小さな結晶面がわかるだろうか。
これもガーネットにはよくある結晶面。これをあわせて36面体となる。
人気のマンダリンガーネットはこのスペサルティンに分類されるよ。
それでは赤系統ラストとしてパイロープ。
日本名:苦礬石榴石(くばんざくろいし)。
マグネシウムとアルミニウムを主成分としている。
写真は愛媛県新居浜市産のパイロープ。
写真は12面体のパイロープ。母岩になっている石はエクロジャイトといって、これもまた貴重な石であるのだけれど、とりあえず今回は省略。
実はこのパイロープこそが、一般的なガーネットの代表。なぜなら宝石店で売られているロードライトガーネットこそがこのパイロープだからなのだ。
さらに、すでに絶産しているけれど中世ヨーロッパで貴重とされていたボヘミアンガーネットもこのパイロープ。
そしてこの色をガラスで再現しようとしたのがボヘミアングラス。
教会のステンドグラスの赤もボヘミアンガーネットの赤を模しているんだよ。
そのパイロープ。色の特徴としては、結晶の中心部がピンク。外にいくにしたがって赤が強くなってくる。
きっと、私たちが持っている結晶もそうなんだろうけど、割って確認する勇気なんてありませんから。
ここまで紹介してきた赤系統のガーネットを3種類紹介してきたけど、これらのガーネットは成分の量が連続して変わっていっている。
ちょっとわかりにくいんだけど、アルマンディンの鉄が徐々に減りその分マグネシウムが増えていくと、いつのまにかパイロープになっているということ。
宝石のロードライトも実際にはアルマンディンとパイロープの中間にあるんだよ。
さて、次からは緑系統のガーネット。
しばらく前まで緑系はアンドラダイト以外日本では採れないと思っていた。
ホントに数が少ない。私が知らないだけかもしれないけど産地も少ない。
そんな中、まずはグロッシュラー。日本名、灰礬石榴石(かいばんざくろいし)。
この石も日本で見つけることができるなんて思ってもいなかった。でも、ちゃんと採集してきましたよ。
場所はやはり岐阜県。洞戸村(ほらどむら:現関市)にある洞戸鉱山。見つけられる場所はかなり狭く、テニスコートの半分くらいの広さしかない。しかし、そこをよく見ると、小さいながらも緑のグロッシュラーがあちこちに散らばっていた。
どんな石もそうなんだけど、ここのグロッシュラーも小さければ小さいほど色がキレイ。大きくなるとヒビが入ったり濁ったりして、なかなかキレイなものがない。
グロッシュラーは他にツァボライト、トランスバールジェード、ヘソナイトなどの名前をつけられて売られているよ。
続いてウバロバイト。灰クロム石榴石(かいクロムざくろいし)。
この石は私たちはまだ採集したことがない。石友から長野県産のものを1個いただいて持っているだけ。しかも残念ながら皮膜状。ガーネットの結晶が出ていない。
でも、それは仕方がないんだ。外国産のウバロバイトを見ても結晶はものすごく細かい。その上、高い。
「えー、こんな小さい結晶に、こんなにお金払うのヤダなー」って思うくらい。
なかなか大きな結晶に育たないんだろうな。
ここは色を楽しむということでしばらくは我慢したいと思っているよ。
最後にアンドラダイト。(灰鉄石榴石:かいてつざくろいし)
このガーネットは上記の2つに比べると、けっこういたるところにあるような気がするなあ。結晶大きいし。
で、アンドラダイトの一般的な代表といえばデマントイドかな。これはものすごくキレイ。カット研磨され宝石店でも指輪になって売っているよ。
ところで、デマントイドはあくまで一般的な代表で私たちはもっと別の代表があると思っている。日本で採れて世界に誇れる、ものすごいアンドラダイト。
それは通称レインボーガーネット!
表面が七色に光るこの石は世界にもほとんどない。一般的にいうレインボーは結晶のヒビに光が干渉して見えるものだったけど、このガーネットはヒビなんかなくても結晶自体がレインボーを発生する構造になっている。
それまではわずかにレインボーを示すものがメキシコでほんのちょっと産出していただけだった。希少すぎて値段なんか付けられなかったくらい。そして絶産。今はもうない。誰もがレインボーガーネットは夢か幻だったと思っていたんじゃないかな。
ところが、それが日本で見つかったのだ。しかも大量に。
さらにレインボーの出方がメキシコ産とは比べものにならないくらいハッキリと大きかった。たぶん世界中が驚いたはずだ。
もちろん私たちも指をくわえて見ているわけにはいかない。
以下は採集したレインボーガーネット。
アンドラダイトには他にトパゾライト、メラナイトがあるけど、私はこのレインボーガーネットをこそ代表にしたいと思っている。
ちょっと宣伝。
私たちのホームページで「鉱物写真集CD」を作って売っているんですけど、このレインボーガーネットを購入していただいた方全員にプレゼントしています。
1000円です。もしよかったら買ってね。
ガーネットっていろいろな名前を付けられて売られているから、ものすごくたくさん種類があるように思っている人がいるかもしれないね。
でも、それぞれの主成分をしらべてみると、そのほとんどが今回紹介した6種類のいずれかになる。
それでは、また次回。
受験を控えている人たちはいよいよ大詰め。
体調管理に気をつけてガンバってくださいね。