鉱石と鉱物はちがーっう!
ふぅぅぅー。
初っぱなから叫んでしまったよ。
まあ、いい方だけの問題なんだけどさ、最近、「鉱物」と「鉱石」を混同している人が多くてね、それでついつい叫んじゃったっていうわけ。
そこで、ちゃんと区別をしてみるよ。
まず、鉱物とは「地球上に存在しているすべての石」のこと。まさに「地球のかけら」が鉱物。
それに対して鉱石は「鉄とか銅とかの金属資源を取り出せる鉱物」のことをいうんだ。
まあ、世間一般からしてみれば、そんなの「どっちでもいいじゃーん」って感じだろうけど、私としてはこだわりたいんだよね。
さて、そんな鉱石のなかにもいろいろあって、ショップなどでも当然売られている。
その代表的なものの第1位は赤鉄鉱(せきてっこう:ヘマタイト)。
さすが鉄鉱石。石っていう感じじゃないよね。いかにも金属って感じ。
この石に限らずなんだけど、金属鉱物はどれも重い。ヘマタイトのビーズでネックレスなんか作ったりすると、重すぎて肩がこる。
ところで、ヘマタイトには「鉄のバラ(アイアンローズ)」って呼ばれているものもあるんだよ。
すんごくかっこいい。でも、めったに手に入らない。私も写真しか持っていないよ。
第2位、黄銅鉱(おうどうこう:チャルコパイライト)
先に紹介したとおり、銅鉱石であるこの石はものすごく金に似ているんだ。ある意味、金以上に似ている。だからよく間違えられる。
この石はかなりありふれた鉱物で、銅鉱山のあったところには必ずある。一番見つけやすいのは河原で、ホントに金のようにキラキラしている。
お店で鉱石を買おうとしたら、この2つが一番お手頃かな。
パイライトはどうしたー。っていう声が聞こえてきそうだけど、この石は後ほど詳しく。
以下、売られてはいるけど手に入りにくい鉱石。
金鉱石 (エレクトラム)
※ 黒い部分に金が含まれている。黒いのは銀も含まれているから。
銀鉱石 (淡紅銀鉱:たんこうぎんこう)
※ 銀の含有量が減ると濃紅銀鉱(のうこうぎんこう)といわれるようになる。銀なのに赤いのがおもしろい。そのためこの石をルビーシルバーとも呼ぶ。
鉄鉱石 (磁鉄鉱:じてっこう:マグネタイト)
※ これが細かくなると砂鉄になる。
チタン鉱石 (金紅石:きんこうせき:ルチル)
※ ルチルっていうとルチルクォーツを思い浮かべるけど、スタールビーやスターサファイアのスターもルチルが作り出しているんだよ。
アンチモン鉱石 (輝安鉱:きあんこう:スティブナイト)
※ 輝安鉱は日本が世界に誇る鉱物だぞ。世界各地の博物館に展示されている輝安鉱はほぼすべて日本(愛媛県西条市)産だったりする。最低名前だけでも憶えておいてほしい。
さて、後回しにしていたパイライト。日本名は黄鉄鉱(おうてっこう)。
この石は鉄を含んではいるけど、その含有量が少なすぎて鉄鉱石には向いていない。だから鉱石の中に含めなかった。
黄銅鉱とならんで金に間違われやすい黄鉄鉱。黄銅鉱以上にどこにでもあって、「金を見つけたぞー」といっているほとんどがこれらだったりしている。
この黄鉄鉱は硫黄と鉄でできている硫化鉱物。で、この石、保管に十分気をつけてもらいたいんだ。
あまり大げさに考える必要はないんだけど、硫化鉱物は放置しておくと空気中の水分と反応して硫酸を発生させてしまう。まあホントにわずかだから危険なことはない。
しかし、それが他の鉱物に悪影響を与えてしまう可能性はある。パイライトは他の鉱物と一緒に保管するのはできるだけ避けた方がいいよ。ウチはケースに入れて密閉している。
それからパイライト自体も表面が変質していってしまう。毎日やさしく乾拭きしてあげましょう。
以下は代表的な硫化鉱物。
白鉄鉱(はくてっこう:マーカサイト)
鶏冠石(けいかんせき:リアルガー)
石黄(せきおう:オーピメント)
どれも保存性があまりよろしくない。
水分だけじゃなく、日光にも弱いから保存には十分気をつかってあげよう。
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思い切ったことをいうと、水晶やトパーズなどの宝石類はある日突然なくなっても私たちの生活に影響を与えることはない。
しかし、今回紹介した鉱石がなくなってしまったら、生活どころか社会がたち行かなくなってしまう。
透明でもない、ぱっと見に地味な石が多いけど、現代社会の根底を支える石たちだと思うとなんだか愛しく思えてくるね。
水晶プレゼントにたくさんご応募いただきありがとうございました。
残念ながら外れちゃった方、ごめんなさい、次こそ必ずあててくださいね。
そして、見事に当選された方、おめでとうございます。水晶の調子はいかがですか。お店では売っていないエレスチャルのような変わった形の水晶もあって、きっと楽しんでいただけていると思っています。
ところで、私たちは抽選にはまったくタッチしていないんで、どなたが当選したのかわからないんですね。
だから、「当選したよー」ってメールを直接何人かの方からいただいたときは、素直に嬉しかったです。
なんていうのかな、顔が見えるって感じかな。
「あのとき採ったあの水晶が今はこの人の手元にあるんだ」って思うと、「繋がってるな」って感じることができて、ちょっとジーンときちゃいました。
それから、応募していただいたときに感想も書いていただいたんですけど、あのう、……苦情とかも書いてもらっていいんですよ。
ほとんどがほめてくださっている内容で、それはそれで嬉しいんです。ですけど、「つまんない」とか「ここ間違っている」とか「もっとこうしろ、ああしろ」というご意見も絶対欲しいんです。
ぜひよろしくお願いします。私に直接メールを出してもらっても、ぜーんぜんかまいませんからね。
メールアドレスはこちらです。
tatsu348@hotmail.co.jp
まってますよ!
さて、前置きが長くなってしまったところで、ようやく今日の本題。
感想と同時に「大好きな石」とか「気になる石」とか「特集してもらいたい石」なども書いていもらったんだけど、そのなかである石がダントツ人気でした。
もちろん、水晶とかガーネットとかたくさんありましたよ。でもズバ抜けている石があったんです。
その石とは?!
インカローズ!!
チャンチャチャーン!
カミさんとふたりで「キターッ!」って叫んでしまいましたよ。
というわけで今回はインカローズについてです。
まず、最も一般的な名前である「インカローズ」はあくまで商品名だということを知っておこう。
正式名称は「ロードクロサイト(菱マンガン鉱:りょうマンガンこう)」。日本名のとおりマンガンを主成分としており、薄いピンクから濃い赤までの色を持っている。
お店で売られているインカローズは2種類あって、縞の「あるもの」と「ないもの」。
どちらもキレイだよね。
で、「縞のあるものより、ないものの方が高価なのはなぜ?」という質問が多かった。
んー、確かに。
一般的には「ない」ものより「ある」ものの方が高い印象なんだけど、インカローズはそうじゃない。「ない」ものの方が高い。しかも圧倒的に高い。10倍以上違ったりする。
もちろん、この2種類は同じものだよ。違う石を同じ名前で呼んでいるわけじゃない。
なぜか。
それは、縞のない方が「結晶」だからなのだ。
岩石のスキマに元になる成分が沈殿し、固まっただけのものが縞のあるタイプ。
高い圧力下で長い時間をかけてゆっくり成長していったものが、結晶である縞のないタイプ。
ルビーやサファイアなどの宝石と同じでき方だ。この色と透明度なのだからインカローズの結晶はまさしく宝石だ。
しかし、残念ながらこの石は硬度が低かった。
宝石になる条件のひとつ「硬いこと」がこの石には欠けていた。
「硬いこと」の基準はモース硬度で7以上。それに対しインカローズは4。
柔らかいといわれている蛍石(フローライト)と同じなのである。
もし、7以上の硬度があればダイヤモンドやルビーと並んで確実に宝石店のショーケースに並んでいたに違いない。
そんなインカローズの結晶、上質のものは100円玉くらいの大きさで15万円ほどもしてしまう。
簡単に手を出せる金額ではないけれど、この石は宝石と同じなのだ。
産地でいうと、世界中でインカローズは採れている。有名どころはアルゼンチン、ペルー、メキシコ、南アフリカそしてアメリカかな。特にアメリカからはものすごくキレイな結晶が採れている。
日本でも何か所かにマンガン鉱山があって、インカローズが見つかっている。私が知っているのは北海道、青森県、秋田県、岩手県、茨城県、石川県、愛知県……。
けっこう多いな。
特に茨城県ではキレイな結晶が見つかっている。
で、石川県なんだよね。しかも調べてみたら金沢市なんだ。「おおっ、近い。行くぞっ!」って思ったんだけど、徒歩3時間なんだって。
でさ、ウチらってアウトドア派って思われることが多いんだけど違うんだよね。欲しい石が山にしかないから外には出るけど、本当ならコタツのなかでミカン食べながら石を眺めていたいインドア派なんだ。
よって、3時間って聞いただけで挫折しました(根性無しめとお笑いください)。
ここまで、インカローズについて話してきたけど、マンガンを主成分にしている宝石級の石はそれだけじゃない。
有名どころがあとふたつある。
バラ輝石(ロードナイト)とパイロクスマンガン石。
バラ輝石はビーズにもなっているからなじみ深いよね。この石も結晶でないことの方が多い。正確にいうと微細な結晶しか育たず、それらが固まりになっている場合がほとんど。
まれに大きく成長した結晶が見つかることもある。それは真っ赤ですばらしくキレイ。しかし、希少すぎて店頭に並ぶことすらめったにない。目に見える大きさの結晶が手に入ったら大ラッキーだろう。
そして、さらに希少な石がパイロクスマンガン石である。私たち鉱物ファンは略してパイマンって呼んでいる。
ルビーよりも美しい赤を持っているといわれているこのパイマン、当然のようにめったに結晶にならない。なんていうのは序の口で、それを産する産地すら世界にほとんどない。
ならばいったいどこで産出するのか。
日本だ。
愛知県設楽群設楽町にあるそこに、私たちはこれまで何度も行っている。しかし、小さなものしか見つけられず、まともに採集できたことは一度もない。
見かねた石友からちょっと大きめのものをいただいて持っているだけである。
世界的に希少なパイマン。ちょっとやそっとで採集できるほど楽な石ではない。
採集できないことを残念がるより、その産地が日本にあることを幸せだと考えるべきだろう。
ここまで、「インカローズの結晶は美しい」とか「バラ輝石の結晶は美しい上に希少だ」とか「パイマンは産地すらめったにない超希少石だ」なんて書いてきたけど、じつはこの3つほとんど見分けがつかないんだよね。
ていうか、ちゃんとした化学分析をしなければまったくわからない。インカローズだけが結晶の形がちょっと違うくらいかな。日本名で「(菱)マンガン鉱」というくらいだから菱(ひし)形の結晶面を持っているんだ。
でも、それ以外はよくわからない。どれもいい色でウットリするばかり。もう区別なんかしなくてもいいんじゃないかと思っちゃうくらいだよ。
さて、長々と書いてきたインカローズ特集だけど、最後にどうしても知っておいてほしいことがある。
それはこれらの石がいつのまにか真っ黒になってしまうこと。
これはマンガン鉱物の宿命で、表面が酸化してしまうことで起きる現象。けっこう短期間(数年)で黒くなってしまう。
でも、心配する事なかれ。元に戻す方法はちゃんとある。
その方法とはレモンだ。レモン汁をかけると一気に還元され元の鮮やかな色が蘇る。
うちのカミさんはいちいちレモンを切るのがめんどくさいという理由でポッカレモンを使っている。
夜、石をコップに入れそれが全部沈む程度にポッカレモンを入れておくと、翌朝には真っ赤っかになっている。
この方法、ものすごく安全で簡単だから、すでに色がくすんでいる結晶を持っている人は試してみて。
ただし、黒いところが全部なくなる可能性があるから、結晶だけを赤くしたい人は綿棒を使ってチョンチョンとつけるといいんじゃないかな。そこあたりは工夫してみてね。
(※真っ黒、というのは母岩の事を指しています。効果が分かるのは真っ黒に黒ずんでいる場合ですので、少し黒ずんでいるかな?という状態では分かり辛い可能性がございます。また、ビーズやタンブルなどの状態では、同じような変化はおこらない可能性がございますので、ご確認くださいませ。)
いよいよ冬。インカローズの赤い色がポカポカ暖かそうです。みなさんお風邪など召されませぬようご自愛くださいませ。
それから、このコラムを読んでくれている男性諸君。クリスマスですよ、クリスマス。プレゼントにインカローズの結晶なんていいかもよ。