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地球のかけら

【第4回】フローライトをたずねて

2007年4月15日
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今年最初の採集として岐阜県関市に「ほたる石(フローライト)」を採りに行ってきました。今回はその報告です。

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産地は岐阜県関市の山の中。車を停め林道をしばらく歩くと、砕かれたような白い石英が不自然に斜面を覆っているところがある。
ここが、私たち鉱物採集家が「ズリ」と呼んでいる場所。ズリとは「目的の石を見つけることの出来る場所」のことで、それは鉱山跡だったり、山の斜面だったりする。ここを探すとほたる石がある。
ちなみに、このズリは鉱山跡だからかなり楽に行ける。なぜか楽かというと、鉱山が稼働していた当時、採掘した石を運び出すための道が残っているから。
道なき道を行き迷ってしまう産地も多い中、ここは道に沿って歩くだけ。山の中だからこの安心感は重要。しかも、1時間も2時間も歩いたりしませんからね。せいぜい10分程度が私たちの限界でしょうか。それ以上になると「遠くてイヤ」ってなっちゃうんです。たんに根性なしなだけですけど。

さっそくリュックから100円ショップで買ったクマデを取り出し、潮干狩りのようにズリをひっかく。ここのほたる石は石英の中に含まれていて、石英をよく見ていけば必ずほたる石にたどり着ける。
少しずつズリを登りながら、石英をひとつふたつ拾い上げると瑪瑙になっているものや、細かいけれど水晶がはえているものがあった。
数個拾ったところで緑の石がついている石英を見つけた。ほたる石だ。まじまじ見ればキレイなパステル系の色をしている。
欲をいうならもうちょっと色が濃いといいなという感じ。たぶん表面にでていたせいで少し薄くなったんだろう。私たちは石英の中に隠れているほたる石を、それを割って取り出すことにした。
ズリを見渡してみると、それらしい石英があちこちに転がっている。石英は色が白いため中の色が透けて見えるからすぐわかる。
緑の石英や紫の石英があった。紫はなかなかないから、ぜひとも取り出したい。
私たちは何個か石英を集め、鮮やかなほたる石が姿を見せる、その瞬間を想像し、ドキドキしながらハンマー握りしめた。
しかし、このとき私たちは重大な事実を忘れていた。
石英はむちゃくちゃ硬かったのだ。

割れない……。
ハンマーでバンバン叩いてもビクともしない。渾身の力を込めて叩いても割れるようなレベルではなかった。
しかも、ほたる石は非常にもろいのだ。ふだんの生活で手を滑らせ床に落としただけでも割れてしまうほどなのだ。
つまり、石英を割ろうと頑張っている間に、中のほたる石の方が先に粉々になってしまう。これは致命的だった。
せっかく見つけた大きな紫色の結晶が粉々になっていたとき、さすがのワタシも力が抜けました。

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石英を割ることは不可能と判断した私たちは、すでに石英から分離した結晶を探すことにした。持ってきたクマデで斜面を掘り少しでも深いところにあるほたる石を探す。すると、これが当たりだったらしく鮮やかなほたる石がポロポロと転がりだしてきた。
さらに、見つかればラッキーといわれているこの産地でしか発見されていないドーム型の結晶まで見つかった。

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結局、一日そのズリで過ごしました。今年初の採集にしては満足のいく結果だったかな。
んー、でも、やっぱり紫の結晶はおしかったなあ。
 

【第3回】惚れたら負け!?宝石は''女性のもの''へ

2007年4月 1日

前回、宝石の歴史をちょこっと考えてみた。
約3500年前、聖書に書かれたそのときから始まり、「魔力を持った石(マジカルジュエリー)」として、主に戦に勝つためのお守りとしてその歴史を刻んでいった。
その後、勝った者たちが自らの力を示すものとして剣などを宝石で飾るようになり、最終的に国が権威の象徴として宝石を所有するようになった。

と、ここまでが前回のあらすじである。
なるほど、確かに王様が被っている王冠なんていうのは象徴そのもの。外交の時や儀式の時にそれを被り、他の国の人たちを威嚇していたんだろうな。
中には30キロ(!)を超すものまで作られていたっていうんだから大笑い。当時のようすが目に浮かびます。どこかの国で大きな王冠を作ったって聞いた王様が「じゃあ、ウチはもっとデカイのを作る」ってなって、それを聞いたまた別の王様が「いや、ウチはもっとデカイのを」「いやいや、ウチなんて」ってなったに決まってる。
想像してみて。頭の上に30キロ。巨大なスイカでも10キロないんだよ。被った瞬間に首が骨折。王様になっても戦いは続くんだね。

まあ、そんなふうにガンバって宝石を身につけていた王様が過去には大勢いたわけだけど、現在、宝石を男のものと考えている人はいない。
いったい、いつの間に宝石は女性のものになったのだろう。今につながる宝飾品の元祖は誰なのか。
ちょっと調べてみると、それは意外と最近の話で、300年ほど前の18世紀初頭だったようだ。ところはフランス。
「あー、やっぱりフランスかあ」という感じだが、そのころのフランスは世界でもっとも裕福な国家のひとつで、イギリスと世界一を争っていた大国だった。そんなフランスに最高の宝石が集まるのは仕方がない。
当時の国王はルイ15世。

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富を湯水のごとく使い愛人をたくさん囲っていた王様で、外国からのお客様に会うときは、いつもまばゆいばかりに光り輝いていたそうだ。世界史的には彼のせいで国の財政が悪化し、フランス革命につながったといわれているのだから豪快である。
その15世のお妃様の名前がマリー・レチンスカ。

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ポーランドから亡命してきた元王様の娘。どうやら彼女が宝石を宝飾品として使った最初の女性らしい。

読んでみた本には、彼女が「王の装身具を解体し自分好みの宝飾品に作り替えた」と書いてある。
うーん。さらっと流しているけど、実はこれってすごいことをしているんじゃないのかな。
だって亡命してきたってことは、国を追い出されたってことで、そんな「元お姫様」と結婚してもフランスには何の得もない。結婚できただけでも奇跡的なことなのに、権威の象徴を王様から取りあげた上、自分のために作り替えているんだから。
「あら、あなた。ワタクシが欲しいといっているのですよ。何か文句でもおあり?」
「いや、それは代々……、あのその……、いえありません」
といっていたかどうかはわからないけれど、惚れたら負けってことなのかな。もしかしたら、このことで「宝石は女性が喜ぶ」と認識した15世が、愛人作りに大いに利用したため財政が傾いたのかもしれないけれど。
なにはともあれ彼女が宝石を権威の象徴から女性の宝飾品にしたのは間違いのないとこ
ろだろう。
その後、15世の孫にあたる16世の王妃マリー・アントワネットが、レチンスカの残した宝飾品をさらに自分好みの細く繊細なものに作り替えたという。現在の指輪やネックレスの始まりはこのときといえるかもしれない。

現代において、王様のいる国は世界に数えるほどしかない。フランスにももう王様はいない。
しかし、その数少ない王国のひとつにイギリスがある。イギリス王室は、まあ何かと話題が多いけれど、近々王様が交代しそうなんだよね。
それで、新しく王様が即位するときは、戴冠式(たいかんしき)という王様になるために王冠を被る儀式をおこなうんだけれど、当然、王冠と一緒に宝石もたっぷり登場するはずなんだ。
戴冠式は世界中でテレビ中継されると思うから、その時どんな宝石が登場するのか、今からとっても楽しみです(不謹慎)。

追伸
4月になりました。新入学生、新社会人のみなさん、希望に胸を膨らませ、ぜひ新しい生活を楽しんでくださいね。
私たちにとっては宝石採集シーズンの到来です!
さっそく活動開始。手始めに蛍石(フローライト)を探しに行って来ます。
結果は次回報告します。

 

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参考文献
フェーマスダイヤモンド : イアン・バルフォア著 徳間書店
ジュエリーの歴史    : ジョージ・エバンス著 八坂書房
ヨーロッパの宝飾芸術  : 山口遼著 東京美術

 

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